日本の鯨食文化伝える映画を上映

映画監督

八木景子さん

 映画製作・配給を行う合同会社、八木フィルムの代表として「クジラを捕獲することが環境に良い」とするドキュメンタリー映画「鯨のレストラン〜SDGsとクジラ〜(英語名:Whale Restaurant 〜Inconvenient Food〜)」を監督し、ニューヨーク市内2か所で上映した。八木監督は、2010年にアカデミー賞を受賞しイルカ漁を批判した映画「ザ・コーヴ」に対し、反論映画として話題となった「Behind THE COVE」(2015年)を製作。前作から8年かけて完成させた今作では、前作で描ききれなかった「クジラ食がどういったものか」と「クジラの科学データ」を描いている。

 日本で有名なクジラ料理店を舞台にしたドキュメンタリー映画で、クジラ食と料理店での様子を初めて写しだした。作品の中では、クジラ店の常連客である『シン・ゴジラ』の監督・樋口真嗣も出演し「ゴジラは、クジラとゴリラから名前が生まれた」説を映画の中で語る。出演は、谷光男(鯨レストランのシェフ)、ユージン・ラポワント(ワシントン条約元事務局長)、ジュヌビエーヴ・デスポーテス(NAMMCO事務局長・科学者)、加藤秀弘(東京海洋大学名誉教授)など国際的に活躍する科学者が出演し、現代における「タンパク源」の問題、地球温暖化や化石燃料、二酸化炭素など地球の課題に触れている。

 ロサンゼルスに次いで開催されたニューヨークでの上映は、9月21日がハーレムのアポロシアターで、27日から10月3日までがビレッジ・イーストシネマで上映された=写真上=。

 八木さんは、東京生まれ。ハリウッド・メジャー映画会社に勤務後、「合同会社八木フィルム」を設立。長年恐れられていた捕鯨の問題を扱った映画「ビハインド・ザ・コーヴ」は自費を投じ製作をした。2015年に世界8大映画祭の一つであるモントリオール世界映画祭に選出されたほか、多くの映画祭で選出。ワシントンポスト、ニューヨークタイムズ、ロサンゼルスタイムズなど海外の多くの大手メディアに取り上げられた。しかし、配給会社がつかず、さらに自ら借金と寄付を募り配給まで行った。日本のドキュメンタリー映画としては珍しく世界最大のユーザー数を持つネットフリックス(Netflix)から世界配信され大きな反響を呼んだ。

 新作「鯨のレストラン」は、日本が2019年に国際捕鯨委員会(IWC)を脱退して以後の200海里水域内で再開した商業鯨漁の現場と料理店主の日常を映し出す。鯨の竜田揚げや、鯨のベーコン、ラーメンなどが紹介され、日本のかつての食文化としての鯨食の歴史についても紹介している。今回の映画をきっかけに海外からの外国人旅行者で賑わっている日本で、実際に鯨を食べた人の感想がSNSなどで世界中に拡散されれば、日本食文化の新たな側面を伝えるまさに「鯨が通り抜ける針の糸口」になるかもしれない。

 (三浦良一記者、写真も)