おまかせ始めた青木さん
コロナ禍でしばらく外食を控えていて、久しぶりのレストラン再開を「待ってました」とばかり出かけて行って気がついたことはないだろうか。料理の値段が高く感じたり、非接触で会計を済ませる時に、求められるチップの額が最低でも18%、一般的には20%以上を払わないと店からはいい顔をされなかったり。ましてや、パンデミック以前のような15%などをつけたくても、もはやカード決済機にはその選択肢すらない。
いくら美味しい料理を食べても、タックスとチップが2割ならお値段はメニューの金額の3割増に。ニューヨークでは、ラーメン一杯が18ドル程度が相場になっていて、最近ではラーメンに50ドル以上の値段をつける店まで現れて、レストランでの外食も随分とポストコロナで様変わりしてしまった。
そんなことなら、一流のシェフの手料理を家で食べられるサービスが喜ばれるのではないかという発想で生まれたのが、元ベニハナ・オブ・トウキョーのCEO、青木恵子さんがこのほど始めた「シェフ・おまかせ」なるサービス。現在、マンハッタンの一流レストランで腕を振るっている現役のシェフ20人を抱え、フランス料理、イタリアン、スペイン、日本料理まで、総合監督を、ニューヨークの一流フレンチ・レストラン、ラ・カラベルの料理長を日本人で最初に勤めたシェフ、小野正さんが務めている。
料理はすべてコースで 1人 90ドルと140ドルの2種類のみ。専用サイトhttps://www.chefomakase.com/ から希望のシェフを選び、料理のメニューをみて、納得なら予約。材料は予約日前日までに、自宅にフレッシュダイレクトから配達される。シェフは予約時間にやってきて、自宅のキッチンで調理してくれる。コロナ禍で、シェフの出張クッキングは珍しくはなくなったが、現在マンハッタンでのシェフデリバリーは1人前170ドルが相場。4人から1人90ドルで作ってくれるサービスは喜ばれること間違いなしだろう。もちろん、総監督の小野さんもシェフの一人として入っているので、指名があれば喜んで駆けつけてくれる。
プロデュースする青木さんは「親しい人へのプレゼントで、モノをあげるよりも、おまかせシェフをプレゼントしてあげる方がとても喜ばれます。ホスピタリティーとおもてなしが誕生会や食事会にはとても役立ちます」と話す。
青木さんは「ベニハナが成功したのは、値段がガラス張りで、注文した時に全体の値段が大体分かること。大勢で店に入ってバラバラに食事を注文して誰かがとんでもない高いものを注文して目玉が飛び出すような値段になることがない。いま時、高級レストランで外食をしてワインを飲めば一人100ドルでは済みません。なんといってもお酒が高い。家庭で食べればお酒は自宅にあるもので楽しめばいいんですからね」とコロナ禍を乗り越えてのマンハッタン流テーブル新スタイルを提案している。(三浦良一記者、写真も)
(写真左)左からシェフのティアゴ・シルバさん、青木さん、小野さん(青木さん宅のキッチンで)