アートコンサルタント
下田 幸知さん
ブルックリンのパークスロープ地区に日本文化と芸術を発信する場所としてJコラボという施設がある。今月27日、そこに併設する形で、ファッション、化粧品、ヘア、ネイルアートなどが入居するブルックリン・ビューティー・ファッション・ラボ(BBFL)が内装や展示販売商品を一新して生まれ変わる。日本全国から送られてきた現代的な日本の商品やファッション、携帯ケースから手ぬぐいまで並び、さながら「日本文化のマーケットプレイス」のような賑わいだ。日本の地方、その土地を代表する名品や工芸品がところ狭しと並ぶ。マンハッタンから近いとは言えないこの場所に、京都市長を始め、日本全国の地方自治体の視察があとをたたない。最近では地元ブルックリンの住民やコミュニティーの溜まり場、日本文化との接点としての役割も果たしている。この場所を使って日本文化発信の拠点にしたいと言う現Jコラボ代表の佐賀関等さんに、ポンとこのビルを提供したのがアートコンサルタントの下田幸知さんだ。
下田さんは1964年にそれまで東京で勤めていたコングロマリットの秘書を 辞めてパーソンズ・スクール・オブ.デザインに留学、グラフィックデザインを学んだ。2年後に移ったNY市立大を卒業後、コルベット百貨店の宣伝部に就職して広告作りに従事した。「でもね、百貨店の宣伝部の仕事は、当たり前だけど百貨店の仕事の枠を出ない。ディレクターにでもならない限りどのポジションに行っても堂々巡りなのよ」と見切りをつけて自立を決めた。エージェントがついてイラストレーターとして活動を始めると、日本の友人に贈るために作ったクリスマスカードが売れ、大手スーパーのA&Sや書店バーンズ&ノーブルで販売された。そのころ彫刻家の下田治と結婚、80年代にはコマーシャルアートから日本で美術館ブームとなり、日本から美術関係の仕事が殺到し、コンサルタントとして多忙を極める日々を送った。日本の大手新聞数紙にもニューヨーク通信を書いた。2000年に夫の治が亡くなったあとは、アート活動に戻り、画家の西田翔冠さんと共に芸術交流拠点を作ったのが現在のJコラボの前身だ。下田さんによると「ニューヨークで活動する日本人作家は、発表の場所を探すのに苦労することが多い。日本に向けて自分の作品を発信する手段を確保するのも難しい」という。そんな芸術家たちにビルの部屋を住まいやアトリエとして提供したり、食事を作ったり、若手作家を支援してきた。自らも創作活動に励み、今月27日までチェルシーのプリンス・ストリート・ギャラリー(西25丁目530番地4階/Prince Street Gallery 530 wsest 25th St./電話646・230・0246)で個展「最後の晩餐2019」を開催中だ。レオナルド・ダヴィンチ没後500年を記念し制作した新作15枚余りの大作が並ぶ。
ダヴィンチの最後の晩餐は誰もが口を閉じているが、手の動きだけは饒舌だ。下田さんは、絵から人物を抜き、食卓の食べ物を抜き、引き算のアートを油彩で表現している。最終日27日夕には個展会場で作家トークを予定している。
「私の運命は、ホラを吹いていればそれが現実になるのだとか翔冠さんが私のことを言ってましたが、確かに、ライフ・イズ・ア・シリアス・ジョーク(Life is a serious joke=『人生は大真面目な冗談』)かもしれないわね」といってサングラスの中で目を細めた。
(三浦良一記者、写真も)
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■BBFLオープニング=
ブルックリン・ビューティー・ファッション・ラボ(BBFL)のグランド・オープニング・フェスティバルは27日(土)と28日(日)の両日ともに午後1時から午後6時まで開催。場所は BBFL & J+B Design( 300 7th Street Brooklyn, NY 11215 電話・ 347・ 987・3217)詳細はE-Mail : jplusbcafe@gmail.com