Z世代のダンサー、ただいまNYで奮闘模索中

ダンサー、俳優

宮口 えりかさん

 日本で活躍していた芸術家やタレント、俳優が、自分の人生の新たな可能性に賭けて新天地を求め、ニューヨークで日々闘っている。そんな日本の若者たちが多い。日本で暮らしていれば自分の進みたい道で仕事や生活が約束されていたものをわざわざ捨ててまでなぜ彼らは来るのか。福井県出身のダンサーで、フロリダで開催されたNDAナショナルチャンピオンシップ全米第一位、日本国内でも全日本チアダンス選手権大会で全国一位を何度も獲得した宮口えりかさん(27)もその一人だ。日本女子体育大学在学中から株式会社オリエンタルランドが経営する東京ディスニーシーのダンサーとして、クリスタル・ウィッシュジャーニー、ヴィランズ・ワールド、パーフェクト・クリスマスなど多くの作品に出演し、2018年度TBSドラマやミュージックショーなどに出演するなど俳優としても活躍、モデルとしてもドコモ Ahamo 広告、読売ジャイアンツグッズのイメージモデルなどに採用され活躍していた。

 そんな宮口さんが、2019年、一人でアメリカ旅行に来て、NYのタイムズスクエアに立った時に「自分はNYに呼ばれている。なんて今までの自分は小さい存在だったのか。ここで踊りたい」という想いが胸を打った。「今の自分を変えるのは今しかないのではないか」そんな思いにかられながら大学を卒業後、パンデミックが落ち着いた2022年9月にようやくニューヨークに来ることができた。

 現在はコンピューターアート関係の学校に籍を置きながら、ブロードウエーダンスセンターとステップス・オン・ブロードウエーの2つのメジャーダンス・スタジオをかけもちで週に3日から4日のレッスンに明け暮れる毎日だ。周りのレッスン生たちがオーディションの体験などを話して情報交換する姿に日々刺激を受けながらも、学生というステイタスから一日も早く脱却して人前で踊る生活をこのニューヨークで実現させるため葛藤する毎日でもある。「ここに来る前は、私はなんだってできる、そう思ってました。ですが現実は、この思っていたこととは真逆で、オーディションすら受けることができない。事務所に履歴書を送るにも、まずステータスを聞かれる。結果、何もできない自分の存在が悔しくて仕方がない。自分はなんのためにニューヨークに来たのかと失意に苛まれることも少なくなかった。そんな時に自分を支えたのが高校時代の部活の顧問の言葉。「やってやれないことはない、やらずにできるわけがない」だ。今でもこの言葉を忘れることはない。まだ、ニューヨークで有償で踊ったりすることは立場上できないが、ニューヨークでは数多くの無料公演やステージ公演の機会があることも知った。踊り続けることで自分の道が開けていく。そう自分を一番に信じて様々なチャンスに挑んでいくつもりだ。日本での栄光を捨て、海外で白紙のまったくのスクラッチビルドからキャリアを作り出す、本人には試練な話だが、そんなZ世代の若者のライブ現在進行形のNY生活の姿は、閉塞感に覆われている現代の日本の若者たちに一縷の希みと勇気を与えそうだ。

 (三浦良一記者、写真も)