エッセイスト
茂木麻予さん
午前はコーヒーを飲んでから数時間コンピュータに向かって仕事に没頭し、午後は出かけたりジムで運動したりして気分転換。エッセイスト・茂木麻予さんの日常は週末も変わらない。
このたび、姫路文学館主催 「第10回 藤原正彦エッセイコンクール」の一般部門で最新作「地下鉄のクリスマス」が応募数604点の中から佳作入賞した。クリスマスイブの夜に地下鉄で体験した数分の出来事を丁寧に描写した心温まる作品だ。「授賞式に出席しますと言ったら驚かれたのですが、私にとっては選者や他の受賞者に会えるのは自分へのご褒美」と、1月19日に行われた授賞式に駆けつけた。
立命館大学で考古学修士号を取得して専門業務に就いたりもしたが、2013年に渡米して心機一転、エッセイストに転身した。「実はエッセイを書き始めたのは英語なんです」。ニューヨークの英語学校で教えていた随筆家の講義で書き始めた。間を置かずして日本語でも書き始め、文芸誌「タビノコトバ」(現在休刊)の常連作家に。2020年には福井県ふるさと文学館主催「風花随筆文学賞」に応募した「本のおうち」で優秀賞・福井仁愛学園賞を受賞、今回はそれに次ぐ受賞となった。
英語エッセイは、ウェストビレッジの文芸誌「AND THEN」にも数本掲載されている。「英語のエッセイは人格が変わるぐらい違います。日本語は日本人として日本人向けに日本文化の脈絡の中で書いているわけですが、英語の場合は自由なので人格がでこぼこした感じになる」と笑う。直訳はできないらしい。最近は日本語が中心になりつつも英語でも書いている。
新潟県で生まれ育ち、作文が得意だったが物書きを夢見たことはなかった。本は読むだけでなく棚の本を出し入れしたり並べ替えたりするのも大好きな少女で、6年生の時は図書委員長に。「枕元には朝用の本があってエッセイを読んで、入浴の時にはちょっと暗い話、寝る前も別の本。読書は歯磨きするような生活の一部」と、最後に少しはにかみながら規則正しい日常の一端を話してくれた。(小味かおる)
Photo: Peter Bardazzi