ジャパン・ソサイエティーで5日、山崎エマ監督の新作「小学校〜それは小さな社会〜(INSTRUMENTS OF A BEATING HEART)」のプライベート上映会とレセプションが行われた。同作品は、3本目の長編監督作品で、2023年東京国際映画祭でワールドプレミアし、現在さまざまな国の映画祭で上映され、配給中だ。3月2日に開催される第97回アカデミー賞ベスト・ドキュメンタリー・ショート・フィルムにノミネートされている。
ストーリーは、小学校2年生の児童が、新入生を歓迎する会で楽器の演奏をすることになって、希望者を募り、練習を通して楽器の演奏がうまくなるように努力する過程を、丁寧なカメラアングルで子供の表情を捉えながら描いている。自薦で手を挙げた子供が選抜に漏れて涙を流す様子や、親友の選抜を心から祝うクラスメートの様子など、学校のクラスは児童たちにとって社会そのもの、大人の社会の縮図となっている。教室の掃除や給食の当番など、アメリカでは行われていない学校生活の様子もリアルに描かれている。
山崎さんは神戸生まれ。イギリス人の父と日本人の母を持つ。大阪の公立小学校を卒業後、中・高は神戸のインターナショナルスクールに通った。19歳で渡米しニューヨーク大学映画制作学部を卒業後、巨匠サム・ポラードの編集助手としてキャリアを開始したのがこの世界で生きるきっかけとなった。
今回の作品は「教育に関心を持ってもらいたいというか、日本のやり方というのは、日本の中では批判的な声もあるけれど、海外と比べることで、いいところに気づいたり自信を持っていいところがわかるかもしれない」というのが制作の動機だという。
ジャパン・ソサエティーでの客席からは日本の教育の自己犠牲の部分についての質問もあったが「集団生活にはいいところと悪いところがあって、同調圧力とか連帯責任とか自己犠牲とか色々あるけれど、その裏には、協力し合えたり、我慢強いという子供たちがレジリエンス(「精神的回復力」「抵抗力」「復元力」「耐久力」「再起力」)を持っている訳ですから、日本の良いところもあるので、正解は分からないけれど、要はバランスの問題で、全部がだめだとかいうことではないんだと思います」と語る。
(三浦良一記者、写真も)