NYアートセラピー協会、1月1日付で会長に就任した
原田真樹子さん
創立50年以上の歴史を持つニューヨーク・アートセラピー協会の会長にこの1月1日付で就任した。現在会員は400人。アジア人が会長に就任するのは初めて。自身もニューヨーク州及び全米アートセラピー協会認定のアートセラピストとして17年余り活動してきている。コロンビア大学大学院で健康教育学、プラット大学大学院でアートセラピー学でそれぞれ修士号を取得。ニュースクール大では講師を務め、日本版ニューズウイーク誌で「日本を揺さぶる日本人の一人」に選ばれるなどNYで活躍中の日本人女性だ。現在はアートセラピスト向けにレクチャーを行っている。
アートセラピーとは、 言葉では表現できない思いを参加者がアート使って、心のコミュニケーションを図ってみるという癒しの方法だ。ニューヨーク州では、ライセンスを持っている人でないとアートセラピー行為は法律で禁止されている。対象となるのは精神疾患など心の病を持った人で、刑務所からメンタルヘルス治療施設などに移った人など、言葉で表現することで社会とコミュニケーションを取ることが難しい人たちだ。これまでの心の病を癒やして治療する分野から、新型コロナウイルスの蔓延(パンデミック)を境に、アートセラピーが人権や差別と対峙する心理療法の一つとして自分の軸足の比重が少し移ってきているのを感じるという。
「セラピーを受ける人は、特段アートに興味はなくてもいいんです。言葉で表現できない思いをアートでわかってもらう自己表現とコニュニケーションの手段になれば。犯罪は想像力、イマジネーションの欠如から来るんです。例えば暴力で怒りを爆発させることを、アートで怒りを表現できれば、怒りをビジュアライズすることができれば、犯罪を犯す危険性は減るという考え方。ネガティブなものをポジティブに変えていくプロセスがアートセラピーなんです。個人的には誰でも、心の病を抱えていなくても気軽にアートセラピーに参加できるサービスを提供できないか模索中です。アートセラピーを通してこの世の中をハピネスで盛り上げていけたら」と笑顔を見せる。同時に、全米の高級寿司店などに世界の高級塩を卸す商売を営んでいる実業家の顔も持つ。東京都出身の49歳。ニューヨークで16歳の娘と二人暮らし。(三浦良一記者、写真は本人提供)
Photo: Leo Perez