日本美術品のお宝鑑定人

サチコ・ホリ・ファインアート代表
堀 佐知子さん

 ニューヨークで美術品の査定や競売会社への取り次などをする美術品コンサルタント、堀佐知子さんの1日は、新型コロナウイルスのパンデミックから1年を経てようやく忙しさを取り戻しはじめた。世界中の美術商や個人の収集家から依頼を受けた日本美術品の査定や鑑定の依頼、問い合せ、または売却したいという連絡などの対応が増えている。作家名があれば本でその年代を書けば良いが、無銘の場合は似ているものを本、オークションカタログから探して明記するという地味で時間と手のかかる仕事だ。

 堀さんは、クリスティーズとザザビーズという世界の二大オークションハウスの本部に勤務するという貴重な経験を活かして日本美術に関する査定、個人、またはオークションハウスからの鑑定依頼、コレクターや会社の美術品売却のヘルプ、コレクターへのアドバイスのほか実際の品物の取引などを行っている。たまにはプロジェクトとして翻訳、展示のキュレーションとそれに関するレクチャーなどもこなしている。自らを「お宝探偵団みたいなものです」と笑う。

 クリスティーズロンドンに1993年に入社し、日本美術部門でスペシャリストの仕事に携わった。ニューヨークに97年に転勤となり、98年にサザビーズに入社。2009年に独立して現在のサチコ・ホリ・ファイン・アートをニューヨークに設立し現在に至る。

 大阪市出身。神戸女学院で中学から大学卒業まで過ごし、大学で専攻した言語学をさらに深めるため米国バーモント州で日本語を教える仕事に充実したあと渡仏。田舎の学校で日本語を教えている時に、クリスティーズのインターン採用に応募したのが、この世界に入るきっかけだった。日本語が大きな武器となった。日本の美術品や骨董品に描かれた署名や文章をきちんと解読できて解説できる人がいなかった。

 偶然のチャンスと人との出会いによって人生の道を切り開いてきた堀さん。競売会社で培った人脈や経験を生かして世界のどこにいてもできる仕事なので、いつかは年の半分ぐらいは、イタリアかスペインあたりで過ごしたいとほのかに思っている。

 (三浦良一記者、写真も)