バイデン、ハリスに期待 トランプ「フェイク政治」の終焉

ジャーナリスト 北岡和義

 民主党中道派の重鎮、議員歴36年のベテランがジャーマンシエパード二匹とともにホワイトハウス入りすることでジョー・バイデンの政治が始動する。米国史上初の女性副大統領となったカマラ・ハリスに期待が集まる。

 ドナルド・トランプの自己本位政治が終わった。バイデン政権にどんな困難が待ち受けているかは誰も知らない。ただ強権フェイク政治が終わりを告げるだけでも2021年は光がさすとぼくは考えている。

 ロサンゼルスに住んでいた時もアメリカの人種平等、民主主義への熱い思いがあった。

 4年前、ドナルド・トランプの登場でいい加減で無責任なアメリカが大手を振った。超保守と言われるトランプ支持者の極端な支援は異常とも言えた。何のためか大統領選挙の投票を巡って小銃を持ち出し真っ黒の服に顔を隠す戦闘服の男たち。今にも発砲しそうな雰囲気で気味が悪かった。

1964年深南部・ミシシッピー州で現実に起こった公民権運動家ら3人の殺害事件を想い出す。アラン・パーカー監督の映画「ミシシッピー・バーニング」。白人優位主義KKKの黒人家庭への放火、爆破による襲撃。黒人への凄まじい暴力が半世紀前の深南部アメリカの真実だった。

 異例づくめの2020年米国大統領選挙。投票は終わっても勝敗は不明、という信じられない奇妙な結果で推移している。2020年12月、トランプは自身の敗北を認めていない。

 トランプの発言によればバイデンが勝った州は不正が行われたという。裁判所に提訴、その州の票のカウントを止めさせようとした。現職の大統領が投票結果を認めない、といういちゃもんで混乱させた。トランプ大統領本人がアメリカ民主主義を腐食させていることだけは確かだ。

 果たしてアメリカは回復できる知恵と良心があるのか。新型コロナウイルスの蔓延とともになんとも理解し難い年明けとなった。

 議員歴が長かったジョー・バイデンは2021年1月20日、第46代米国大統領に就任する。史上最高の高齢大統領で、副大統領に女性、カマラ・ハリスを指名した。これまた史上初の女性副大統領の誕生である。

可能か女性大統領の誕生

 ハリスは1964年10月20日カリフォルニア州オークランド生まれ。インド系移民の母、ジャマイカ出身の父、という血脈で、夫は裕福な白人の弁護士で本人はカリフォルニア州司法長官という経歴である。

 ワシントンDCのハワード大学卒。2016年11月8日カリフォルニア州選出上院議員。

 トランプ政権と極端に違う正副大統領が20日の就任式を経てホワイトハウス入りする。

 ぼくの関心はこの二人の民主党政治家によりトランプでガタガタになったアメリカの政治を修復、修正できるかどうか。

 当面、対立が先鋭化した中国との関係をどうするのか。中国共産党の一党支配が強化され、アメリカが香港や台湾に接近すれば中国の反発は一層強まる。

 日本との関係は日米安保体制下、変わりようがない。中国、韓国、北朝鮮など北東アジアへの政策に変化はあるのか。外交のベテラン、バイデンの政策が注目される。

 そしてカマラ・ハリス。早くもバイデンの後継が噂されている。とすれば米国史上初の女性大統領が誕生する。2021年、アメリカが面白くなってきそう。

2020年はコロナで明けコロナで暮れた。しかも年末になってコロナ感染はますます拡大傾向にある。どの国も乗り物やレストランに規制をかけている。まさにパンデミックだ。これがいつ沈静化へ向かうのか、だれも分からない。

 政府も東京都もオリンピックを敢行するつもりらしい。このコロナ蔓延の時期にそれが可能かどうか。

 21世紀とはこうした予期しない天災に見舞われ、各国がどう対処するのか。

 アメリカはコロナ退治に関し完璧に失敗している。どうやらアメリカの世紀はすでに終わっているのではないか。

 新しい時代はどこがリーダーになるのだろうか。中国はどうする? 

実に興味深い。

(きたおか・かずよし=読売新聞記者を経て日本大学教授、ジャーナリスト)