その21:心にいくつも穴があいた2020年

魅惑のアメリカ旧国道「ルート66」 をフォーカス

 ルート66ファンの皆さん、こんにちは!「気が付けば」という枕詞は先月も使いましたが、2020年も遂に12月となりました。今年は何かあっという間に時が過ぎ去った気がします。筆者も現在一時的に日本に居を構えていますが、今年はアメリカに「帰る」ことが出来ない一年でした。タックス・リターン(日本で言う年末調整)は何とか終えることが出来ましたが、実際にルート66に出て友人知人と交流することや、新しい情報を仕入れる作業などが全部棚上げとなった2020年です。コロナウイルス感染対策については世界は日に日に進歩しており、医療従事者の皆さんのおかげで病原の解明や分析、さらには治療法の確立へのスピードは目を見張るものがありますが、まだまだ予断を許さない状況には変わりはなく、どのような2021年になるのだろうと期待と不安が入り混じる気持ちです。

 ルート66ではこちらの毎月のコラムでも紹介していますように、今年は数多くのイベントがキャンセルとなりました。代表例をあげれば毎年8月にミズーリ州スプリングフィールドにてルート66の誕生地として開催される「Birthplace of Route 66 Festival」が中止、来年に延期されました。2011年の初開催から少しずつ規模が大きくなり昨年は6万5000を動員し、今年は8万人越えを予定していただけに非常に残念なことでした。(筆者も何らかの形でブースをだす計画もあったのですが)また、5月にはルート66のシーズン開始を告げるアリゾナ州セリグマンでの「Arizona Fun Run」、10月の文化・学術的な意味の高いカンファレンスであるイリノイ州エドワーズビルでの「Miles of Possibility」、そして同じく10月、世界的にも有名なイベント、ニューメキシコ州アルバカーキでの「International Balloon Fiesta」の中止、延期はルート66関係者に精神的にも経済的にも大きな影響を与えました。アメリカ以外でも、チェコ共和国のズリンで開催される予定であった「International Route 66 Festival」も2021年に持ち越されました。つい先日、オクラホマ州タルサで行われる11月の「Route 66 Marathon」も今年はバーチャルイベントとなったことは記憶に新しい限りです。来年は、今年延期となったイベントが全て新たな形でパワーアップして戻ってくることを期待したいものですね。

 ただそうは言えども、コロナ禍の影響で経営が行き詰まった、廃業に追い込まれた、というルート66沿線の事業主さんからの声をほとんど聞かなかったことは不幸中の幸いではなかったでしょうか。ルート66沿道事業では、そもそもビジネスが上手くいかなかったり、経営者が高齢になって後継ぎがいなかったり、事業を売却したいけど買い手が見つからなかったり、が理由で廃業するモーテル、お土産屋さん、そしてガスステーション等が少なくありません。これはルート66の抱える根本的な問題の一つでもあり、「どのようにしたらビジネスとして経営が長いスパンで成り立ち、ルート66を盛り上げていけるのか」はここ数年特に緊急の解決策が必要な事項となっています。

 また、その経営者さん達に話題を移しますと、今年は(コロナ感染が理由ではないのですが)私たちが「アイコン」と呼ぶ、ルート66の発展に多大な努力と貢献をされた多くの素敵な人々が他界されました。さあ今年もシーズンが始まるぞ!と思い始めた春、ミズーリ州キューバの名物観光地「Bob’s Gasoline Alley」のオーナー、Bob Mullen 氏が病気で亡くなりました。5月にはニューメキシコ州ルート66アソシエーションのボードメンバーでもあり、数多くのネオンサインの修復に貢献してきたJohnny Plath 氏、6月にはイリノイ州ルート66アソシエーションに長年に渡って貢献された Marty Bilecki 氏、夏の8月にはアリゾナ州ルプトンにある、誰もが知るアメリカ先住民のクラフトショップ、Chief Yellowhorse Trading Postのオーナー、Frank Yellowhorse 氏、そして11月に入っては、ミズーリ州カーセイジのこれも著名観光スポットRed Oak II を造りあげた偉大なる芸術家、Lowell Davis 氏が83歳の生涯を閉じました。さらにはこれを執筆している最中にも、今月初頭ミズーリ州ホールタウンにあった雑貨屋さん、Whitehall Mercantile のオーナーJerry White氏が亡くなったというニュースが入ってきました。「〜にあった」と書いたのは、このお店は2016年の秋に、White氏の体調が良くないということですでに閉店となっていたからです。ここでは全ての方々を紹介することはできませんが、彼らのご家族とご友人には心より哀悼の意を表したいと思います。

 最後に少し楽しい話をしましょう。フランスはパリ郊外にある「ディズニーランド・パリ」は現在コロナ禍で閉園中ですが、2021年へ向けて新たな取り組みが行われています。これまたこちらの投稿でも紹介していますディズニーピクサー社の映画「CARS」ですが、「Cars Route 66 Road Trip」と名付けた家族向けの新アトラクションがヨーロッパにも誕生することとなりました。メインエントランスは1950年代から60年代にアメリカを席捲したMid Century Modern風の建築で、自動車のインスピレーションをふんだんに盛り込んだものになっており、ルート66にまつわる地図、ポストカード、そして装飾デザインに満ちた観光ブースを通りながらアトラクションを楽しむように出来ているとのことです。もちろんディズニーピクサー社の創り上げるものです、細部まで徹底的にこだわるであろうルート66のテーマ性には大人でも充分に楽しめるはず。新アトラクションは現在進行中のパーク拡張計画の第一歩とされているようで、今後の展開から目が離せません。筆者も未だパリのディズニーランドには行ったことがありませんが、今後は訪れる「大義名分」が出来たようです。

 それでは皆さん、メリークリスマス!良いお年をお迎えください。「魅惑の旧街道を行く」新シーズン④もお楽しみに!

(後藤敏之/ルート66協会ジャパン・代表)