クイックUSAアメリカの人事部(26)

クリエイティブな仕事は報酬だけでは成果上らず

■御社の労働分配率は?

 このような環境の中、改めて人件費を管理するにあたり、粗利に占める人件費の割合いをチェックしてみることも大切だろう。御社の労働分配率(労働分配率=人件費÷粗利)はコロナ前とコロナ後で変化があるだろうか?

 コロナ前の労働分配率を維持した上で、2021年の昇給やボーナスの計画を立てる際、「コロナ後に売上が下がる中、どの程度の人件費を見込むか」という計画には労働分配率を再度チェックすることが考えられる。    

報酬と動機付けについて(新しいインセンティブの仕組みは登場するか?)

 最後に、報酬と成果の関係を考えるにあたり、約10年前のダニエル・ピンクのTedでの講演動画をご紹介しよう。

 動画でも語られているように、回答が決まっているような仕事はインセンティブによって仕事の成果も上がるが、クリエイティブな仕事はインセンティブを与えることではなかなか成果が上がらない。逆に成果が下がることが分かったという。  

 クリエイティブな仕事に必要なのは、自主性・成長・目的と言った「個人が仕事に見いだす意味」が重要なのだ。動画で事例が紹介されているようにWikipediaやLinux等、無報酬ながら参加するメンバーによる貢献によって成り立った素晴らしい仕事がある。「馬にニンジンをぶらさげる」方式のインセンティブではこのようなクリエイティブな仕事は成り立たなかったというのだ。  

 このダニエル・ピンクのTedを思い出させたのは3年前にTedで話されたAdam GrantのGive & Takeだった。

 与える人ほど成功するというこのコンセプトについて、組織のインセンティブの仕組みをどのように考えたら良いだろうか?  

 ダニエル・ピンクのTedから10年。この時に既にビジネス界のインセンティブは発見された事実と乖離していると言われている。  

 2021年、ビジネス界はようやく新しいインセンティブの仕組みをもっと積極的に導入することになるだろうか?    

 今回も御覧いただき誠にありがとうございます。引き続き皆様の安全と健康、そして、可能な限りのビジネスの再興をお祈りしております。

(山口 憲和 Philosophy LLC 代表)

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