総選挙で与党大幅削減、失われた30年挽回の好機

 10月27日の総選挙で、自民党と公明党の与党が65議席減で過半数を失い、立憲民主党と国民民主党が71議席を増加しました。これは、自民党議員の政治資金の裏金問題や旧統一教会との関係が直撃したものです。これらの関係を指摘された現職大臣を含む多くの議員が落選しました。また石井啓一公明党代表が落選して、代表辞任と言われています。

 しかし、与党が過半数を割ったものの、石破茂首相は、公認されずに無所属で当選した自民党議員の取り込みなどで政権維持を図ると見られます。野党が競合しており政権交代には至らず、与野党にまたがる連立工作が展開される政治の動乱期の到来です。

 他方、9月に自民党と立憲民主党の党首選挙が行われ、特に自民党の総裁候補者同士が政策を競ったことが新しい政治状況を生んでいます。自民党の幹事長が年間に十億円も受け取っていた政策活動費の廃止、日米地位協定の改定、最低賃金の引き上げ、教育の無償化など、党派を超えて取り組まざるを得ない状況になっているのです。

 米国とは異なり、戦後80年のほとんどの時期を自民党が与党として君臨し、国民からの投票で選ばれない首相が国民から選ばれた国会議員を実質的に支配できるのが日本の議院内閣制です。国民と首相とのキャッチボールが少ない政治です。しかし、今回の総選挙はこれまでとは異なり、国民が、自分の選挙区で利害関係のある政治家よりも、永田町政治への信頼や苦しい国民生活改善の政策の是非で投票を決断したと言えます。

 今日本では「失われた30年論議」がブームになっています。30年間の国民の実質所得の低下や、裏金問題を発生させた30年前の政治改革法案の骨抜き、30年間の首相の4人に3人が世襲政治家であることなども争点になりました。これからの政治の動乱期を活かして、国民生活の悪化と政治の不在による失われた30年を挽回するために、政治家が国民に対して政策を競ってほしいものです。  

 来年7月の参議院選挙に至るまでは、米国の大統領選挙の年の1年間のような政治家と国民とのキャッチボールの季節が続きます。「政治への無関心は政治を悪くします」。国民が政治に関心を示して、主役として政治を改革できる1年です。

 ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。