9・11日本人被害者家族の活躍

 9月9日NHK「映像の世紀 9・11あの日が変えた私の人生」は、米国同時多発テロで息子を失った二人の父親の活躍を放送しました。

 白鳥晴弘さんは、一人息子が殺された理由を問い質したいとアフガ二スタンに飛び、ビンラディン宛ての手紙をアルジャジーラ支局に託したが返事はありませんでした。しかし米国の報復爆弾で足を失った少年に「ここに米国人の少年がいたらどうする?」と聞くと「同じ目に遭わせてやる」と「復讐」に燃える少年。白鳥さんは「憎しみの連鎖を起こしてはならない」と、度々アフガニスタンを訪れ子供支援プロジェクトを行ってきました。現在は経営する居酒屋でウクライナ避難民を受け入れています。

 住山一貞さんは、富士銀行(現みずほ銀行)の社員であった息子を亡くしたテロの記憶を風化させまいと567ページものアメリカ政府の報告書を10年がかりで翻訳して出版しました。

当時日本人被害者24名の遺族に対する日本政府の対応は冷たかった、とあるご遺族は語ります。「旅費に加え補償請求書を翻訳する人まで自分で探さざるを得ない一方、日本大使館は遺族への説明会を一度も開催しなかった。政治家が拉致問題では動いたが、9・11では誰も動かない。9・11被害者家族は無視されている」との声が心を打ちました。

 そこで、私は超党派の議員グループを結成して、9・11被害者家族、グアム島の無差別殺傷事件の遺族、チュニジアでの被害者家族からのヒアリングを行いました。その結果2016年に「国外犯罪被害者弔慰金等の支給に関する法律」が成立。死亡で200万円、重度障害者に100万円の支給が確定しました。

 米国でも被害者家族の活躍が光ります。9・11後、独立調査委員会の設置はテロとの戦いの妨げになるとして反対していたブッシュ政権に、設置を決めさせたのは殉職した消防士などの遺族でした。2019年9月の日経ビジネスは、「当時人命救助にあたった『ファーストリスポンダー』(消防士や警察官)や、ほこりを吸って障害を起こした人は延べ7万人以上。700人以上が呼吸器や消化器疾患、600人以上がガンで死亡」と報じています。

 ウクライナやガザを見ても、戦争やテロを起こさせないこと、そして被害者の立場から物事を捉えることの重要性を一層強く感じます。

 ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。