冨永照子・著
TAC出版・刊
ニッポンおかみさん会会長で、協同組合浅草おかみさん会理事長の冨永照子さん(84)が書き下ろした、生きづらいこの世の中を駆けるヒントが詰まった本書『おかみの凄知恵』。浅草仲見世老舗「十和田」四代目の冨永さんは、1960年代から浅草復興のために尽力し、名物となった二階建てロンドンバスの導入、浅草サンバカーニバル、浅草ニューオリンズ・ジャズフェスティバルをコロナ禍前まで毎年開催、浅草のライトアップや、つくばエクスプレスの誘致なども実現させた浅草の活性化と街起こしに大貢献した人物だ。
ニューヨークにも毎年やってきて、今はなきミッドタウンのサクラ商事で日本へのお土産に中国人顔負けの爆買いをして帰国するのが常だった。とにかく思いたったらすぐ行動の人。持ち前の前向きな姿勢で疾風怒濤の人生を無我夢中で走りきってきたおかみの、もはやこれは「アドバイス」なんていう生ぬるい言葉では到底表現しきれない「凄知恵」が凝縮されている。
ではここで、この本を読まない人のためにおかみさんの凄知恵金言集の一部を抜粋して紹介する。
「小さいお金は使う。大きなお金はもらう。人間にも損益分岐点がある。いい子いい子は、どうでもいい子。「勇気」「やる気」「元気」に少しのリスク、馬鹿の一つ覚えは、馬鹿にできない。酒も呑みます、生きるため。嘘もつきます、生きるため。自分の方に能力があると思ったら戦え。ないと思ったらしょうがないから従え。正論吐いて、嫌われて上等。人生、月謝を払ってんのよ。失敗も月謝、何事も月謝。走り出せ、やっちゃえ。やっちゃえば、後はどうにかなる」などなど。
「この本は女性のためだけでなく、男性にもぜひ読んでもらいたい」と冨永さん。「だって、この本には、男の人が社会で出世していくためのコツが満載だもん」と豪語する。この本は、最初から読んでも、途中から読んでも、飛ばし読みしても一向に構わない。一話完結の時代劇ドラマみたいに作ってあるからだ。
ニューヨークには、いろんな日本人がいる。会社勤めで何年かしたら日本に帰る駐在員、「現地除隊」して自分で会社を作って起業する人、自分の夢を実現するためにやってきて、その日に向かってただひたすらに努力しながら日々の生活に追われる若者、日本で一流企業でバリバリ働いていた女性が、本当にやりたかった音楽の道に進みたい、とか、日本で手に職をつけた美容師やシェフがこのアメリカで日本以上に活躍の場を見つけたりとか。いい時も悪い時も、天誅殺の大嵐に揉まれながらも、どっこいみんな生きているのがニューヨークだ。
「歳をとっても錦の御旗を立てたら下ろすな。旗作ったら進め」と言う。「常に新しい旗印を作らなきゃいけない、人生は」「一回旗印を作ったら、ずっとやれるよ、人間は。突っ走れ、死ぬまで走れ。老いたら老いたなりの走り方でいい」。
「おかみさん、ありがとう、なんだかまだ少し頑張れるような気がしてきたよ」と日本だけでなく、NYの読者からもそんな声が聞こえてきそうだ。(三浦)