コロナ時代の帰国受験 第2回 田畑康
受験生とご家族にとって今年のコロナ禍は、コロナに罹ってしまわないかという不安が一番大きいのはもちろんですが、罹患しなくても大きな問題が立ちはだかっています。そう、帰国した後の「2週間の自主隔離期間」です。
帰国生入試の一般入試との大きな違いは、海外生・帰国生のためにアレンジされた入試内容のほかに、前倒しされた試験日程が挙げられます。首都圏の一般入試に関しては、東京都・神奈川県の私立中学は2月1日に、私立高校は2月10日に解禁されます。この日程は各都県の私学協会が定めたルールであり、名だたる人気校の受験日がこの解禁日からの数日間に集中するのはこういうわけです。ですので、帰国生入試に関係のない一般の受験生にとって「事前受験」ができるのは1月に解禁される千葉県・埼玉県の中学と高校となります。
しかし、帰国生入試はその限りではありません。帰国生を受け入れたい各私立中学・高校は、他校と競合しない前倒しの日程を自由に設定することができます。しかもその学校数は増える一方で、結果的に日程の前倒しがどんどん進み、とうとうここ数年間で「帰国生受験は10月開始」が合言葉になってしまいました。海外生・帰国生にとっては受験できるチャンスが増えるわけで、とてもありがたい状況なのです。私が帰国生の指導を始めた15年前、12月に帰国生入試を実施する学校があることを知って驚いた時とは隔世の感があります。
さて、「自主隔離期間」です。例年ですと、北米在住の受験生が帰国生入試を受験するために12月中に一時帰国し、受験して帰米し、本命の1月下旬~2月上旬の受験のために再び一時帰国をする、という「作戦」を取る受験生がいらっしゃいます。時差ボケの問題さえクリアすれば、日本滞在費の節約や、小さなきょうだいの面倒を見る手間も軽減できるわけです。
しかし今年の受験生はそれができなくなりました。オンライン入試でない限り、試験会場に行く日には「自主隔離期間」を終えていなければならないからです。年内の受験校を志望校から外す、または受験機会を逃したくないのでお父様をアメリカに残して母子で本帰国をする、という「作戦」が立てられているのが今年の特徴と言えます。「学力さえつけておけば受験は大丈夫」という考えは間違いありませんが、今年に限っては、試験日程に「自主隔離期間」を考慮に入れた「作戦」も必要になっているのです。
次回は、受験生を受け入れる学校側の試行錯誤について情報提供をさせていただきます。
田畑康(たばたやすし)=早稲田アカデミーニューヨーク校校長。海外生・帰国生指導歴15年。自らも帰国生(オーストラリア、マレーシア)であった経験を生かし、「合格のその先」を見据えた指導を心掛けている。