イケメン男子服飾Q&A 88
ケン 青木
ふと気がつけば、いつの間にやら秋の気配(笑)。
前回は、私たち日本人的に言うのであれば、「ジャンパー」の代表格とも言える、バラクーダ社の「G9」モデルを取り上げました。
そして当地では「ジャンパー」とは言わず、ウインド・ブレーカーだとかゴルフ・ジャケットと言うんですよ、なんてこともお話しいたしましたね。ま、でも「私たち日本人同士の間であればジャンパーはジャンパーでいいんですよ!」とも(笑)。
今回はそんなタイトル第2弾、「ステンカラー・コート」! 私も高校3年生の時に買ったステンカラー・コート、まだ持っているのです。VANヂャケット社のオフ・ホワイト色で丈が少し短めのなんです。
さてステンカラー・コート、アメリカでは何て言うのだろう? はい、一般にはBal Collarと言われることが多いかと。も少し細かくチェックしてみますと、BalとはBalmacaanの略だとか。そしてスコットランドのInvernessインヴァネスという名の街、実はこのInvernessも紳士物コートの名前になってますが、Invernessの中の私有地にBalmacaanがあるんです。この件についてはあらためて。
実はバルカラーとは上襟を寝かせたスタイルなんですが、詰め襟を元に上襟を折り返したPrussian Collarという襟型があり、要するにプロシア、19世紀のドイツの軍人のコートの襟なんですね、この襟型を英語で言うとstand and fall collar、立ち折り襟? とでも訳しましょうか。そしてこの襟を当時しょっちゅう戦争していた敵国フランスから言わせるとsoutien col、日本語的に発音すれば「スティアンコル」、このsoutien、フランス語と英語のcollarが組み合わさって生まれたのがsoutien collarなのだとか! いかにも英仏入り混じった文化が根っこにあるニューヨークらしい御話なのでは?
プロシアの軍人のコートは丈が足首まである、良く言えば重厚、そうでなければ「重ったるい(笑)」?
秋口にガバッと羽織るステンカラー・コートは、コットン・ギャバジンかポプリン地で色はやはりタンとかオフ・ホワイトの明るめの生地のもので、ここが「キモ」なのですが、裾に向かってキレイな円錐を描くAラインのシルエットで、丈は膝丈のものを。
えっ! まんまBulittのマックイーンじゃないかって?(笑) 彼のカッコ良さは永遠かと。そして身のこなしも見習いたいな、と。はい、この秋、いつもよりもう少し機敏な動きでステンカラー・コートを颯爽と着こなしましょう!
それではまた次回。
けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス.カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ。