自主隔離を終了させる新たなガイドライン
CDC(アメリカ疾病予防センター)から今度は、自主隔離(Self-isolation)に関する新たなガイドラインが7月20日に出されましたので、皆様にシェアさせていただきます。やはり弊社のクライアント企業様から寄せられる質問の中で必ず出るのが、従業員を職場復帰させる(RTW: Return-to-Work)までの自宅での自主隔離の期間および復帰の条件についてです。前回は、復帰に際してコロナ感染テストを従業員に義務付けてもよいとするCDCのガイドラインをご紹介いたしましたが、今度は検査のみならず復帰できるまでの期間について新たなガイドラインとともに検証を試みたいと思います。
まずCDCがさまざまな今までの科学的経験値やデータを集めて解析してきた中で、今回の最新ガイドラインを通していえることはテストの結果陽性であることがわかった時点からカウントして自主隔離する期間を今までよりも短く設定しているという点です。また、もう一方での科学的解析から判明したことはコロナの症状が出た人の十分な回復までには年齢の若い人であっても時には数週間を要するということがわかったということです。ということで、CDCは自主隔離を終わらせる期間というのは、その人が呈した症状によるのだというものです。それが従来のガイドラインとは違うところで、従来はテストを1日(24時間)間隔を空けて2回受け、そのどちらの結果も陰性であることが自主隔離を終了させる必要条件でした。ところが最近になって、地域によってはテストキットの深刻な不足やテスト場所の大混雑、そして結果が判明するまでにかかる日数などから2回もテストを受けさせるということがますます困難をきたすようになってきました。
そこで、CDCは必要ではない期間の隔離、そして複数回の重複したテストの施行を回避させるために新たなガイドラインを出すこととなったと表明しています。CDCでは、新たにコロナの症状が出始めてから10日間自主隔離を行い、解熱剤などを使わずに24時間発熱がなく、他の症状も改善している場合に隔離を終了できるとしています。またテストを受けて陽性であったものの、無症状である場合にも10日間で隔離が終了できるとしています。さらに今度はコロナの症状が重篤であった場合、あるいは何らかの免疫無防備状態を持つ人の場合には、症状が出始めてから20日間の隔離を行うこととしています。
しかしながら、CDCは例外措置があることを認めており、それは感染が拡大進行中であります現在のアメリカ南部地域、たとえばフロリダやテキサスの 「ホットスポット」と呼ばれているような地域を訪れて滞在したり移動したりした後に戻ってきた場合には、今までどおり14日間の自主隔離期間が義務付けられます。また海外渡航をした場合にも同じくアメリカに帰国後14日間の自主隔離が必須となります。これらの点については以前と変わりがないので、注意が必要であり、紛らわしいところだといえるかもしれません。
このようにCDCから出されているガイドラインは不定期にアップデートや修正がなされることがよくありますので、CDCからの発表やウェブサイトには目を凝らしていなければなりません。さらに現政権やホワイトハウスの方からCDCに対して突然注文がつくこともあり、独立機関として本来政治から中立であるべき組織のCDCは時にきわめて政治色を際立たせてしまう局面が見え隠れしたりします。これは由々しき構造的問題点で、政治に翻弄されることなく、科学的データと知見(エビデンス)とを積み上げて国民に理解と納得ができるガイドラインのアップデートであってほしいと心から願っています。
(酒井 謙吉 パシフィックドリームズ社長)