I am sorryと首相が言える国 海外日本人サポート

英国のスナク首相のsorry

 英国のリシ・スナク首相は7月5日、爽やかな辞任会見を行いました。国民の皆さんに対してと、一緒に闘い落選した保守党の議員に対してI am sorry と2回述べました。

 そして、次期首相となるスターマー労働党党首に対して「政敵ではあるが、彼が首相として成功することは、私達全員の成功です。彼は立派で、社会を思う心にあふれる人で、私は彼を尊敬しています」と述べました。

 スナク首相はまた「your Prime Minister」と何回か述べました。首相と国民との相互信頼の強さを感じました。

豪州のラッド首相のsorry

 この演説は、2008年の豪州のケビン・ラッド首相が、先住民アボリジニに対して行った演説を思い起こさせます。

 豪州では、約10万人のアボリジニの子供を親から引き離す分離政策が1910年代から1970年代まで行われました。ラッド首相は首相として、政府を代表して、議会を代表して6回I am sorry と述べました。歴代政権の間違いを正し、奪われた世代の苦しみを癒すためにと。全国で白人を含む多くのアボリジニの人々がこの演説を聞き、抱き合って涙を流しあいました。

 その後の歴代首相も党派を超えて、アボリジニの住宅・食料などの格差是正政策を講じています。

岸田首相のお詫び

 岸田文雄首相は、7月17日障害などを理由に強制的な不妊手術を認めていた旧優生保護法が憲法違反だと裁判を起こしていた原告約130人を首相官邸に迎え謝罪しました。「旧優生保護法は、憲法違反で、政府の責任は極めて重大だ。心から申し訳なく思っており、政府を代表して謝罪を申し上げる」と。日本の首相にしては稀なI am sorry ですが、2008年までの48年間も約2万5000人が強制手術を受けていたこと、最高裁判決まで政府が対応を怠ってきたこと、そしてこの謝罪が国民的広がりに欠けていることが残念です。

 日本ではsorryが「ご免、ご免」と軽くとられがちですが、公式謝罪であることも認識すべきです。

米国や日本のトップのsorry

 米国の大統領がI am sorryと述べたことはあまり聞いたことがありません。黒人問題やインディアン問題など幾つかの課題があるのではないかと拝察します。

 米国に加えて日本でも、今年選挙が行われる可能性があります。トップがI am sorryと言えることが国民との信頼関係を高め、民主主義を強化すると思いますが、いかがでしょうか?

 ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。