米語ウオッチ 米国で続々と生まれる新語 

旦  英夫・著

PHPエディターズ・グループ・刊

 本紙経済面に隔週で連載されているコラム「米語Watch」の単行本第2弾が出版された。「米語ウォッチ・アメリカの『今』を読み解くキーワード131」(PHP刊)だ。

 このコラムは2013年から始まり、「米語」を表題にして読者にアメリカの現状と変化を刻々と伝え、好評を博してきた。6年前に、第1弾「米語でウォッチ・日本からは見えないアメリカの真実」が出版され、今回はその後に書かれたコラムの中から131を選び、内容を更新して本にしたもの。

 本書は、文化・生活、社会、経済・ビジネス・技術、政治・法律の4章に分かれていて、全編カラー版でキーワードの解説と例文を見開きにし、とても読みやすくできている。 

 著者による本の紹介はこう綴られる。「今、アメリカは大きな変動の渦中にあります。保守派と進歩派の対立が社会の分断を招き、国内に大きな混乱を生み出しています。そのような状況の中、人種間対立、犯罪対策、銃規制、人工中絶、 移民問題、気候変動、所得格差、LGBTQ対応などの課題で論議が沸騰しています。またパンデミックの収束に伴い、アメリカ社会・文化には多様な新しい現象が生まれ、それに伴う興味深いキーワードがたくさん出てきています」

 最近のコラムの中では、Hallucinate(AIが誤った回答・情報をばら撒く)、Mocktail(ノンアル・カクテル)、Spoiler Candidate(壊し屋候補者)、DINKWAD  ( 共稼ぎ、子供はなくてワンちゃんと)、Gambling Addiction(ギャンブル中毒)などのフレーズが読者の関心を惹く。

 著者によると、ニューヨーク・タイムズなどの主要紙に目を通し、アメリカの友人たちとの会話の中から、キーワードを探すのが最大の楽しみだそうだ。

 旦英夫氏は総合商社駐在員、ニューヨーク州弁護士、会社役員として約45年の歳月をアメリカで過ごしてきた。弁護士として、クライアントに法律のアドバイスをするのに加えて、アメリカという国の仕組みを理解してもらい、ビジネスを成功に導くと同時にリスクを避けることを大事にしたとのこと。その中から、米語をベースに米国社会の実相を説明する発想が生まれたそうだ。

 米語コラムは、今では朝日新聞とAsahi Weeklyにも「米国が分かるキーワード」として連載されている。そこで使われている「あしたのんき」さんによるユーモアたっぷりのイラストが各ページを飾り、この本を非常に楽しい読み物にしている。アメリカ人との付き合いやビジネスにおいて、 変貌するアメリカの「今」を理解するために、貴重な情報を提供する一冊と言える。米国では、今週から紀伊國屋書店ニューヨーク本店に入荷し、店頭に並んだ。9月には同書店で著者、旦英夫さんによるトークと著者サイン会が行われる予定だ。言葉は時代を映す鏡のような存在。鏡に映った姿を見て今を感じるか古くなったと感じるかは己のブラッシュアップ次第だ。(三)