いま日本は世界中から観光客

 夏真っ盛りですね!私は今、日本に帰国中ですが、帰ってくる際に外国人観光客のあまりの多さに圧倒されました。日本に関心を持ち、旅する事を楽しみにしている人が、こんなにも多いのかと嬉しい反面、ここ数十年なかった程の円安の今、日本に来たい人は予想以上に多いのだろうとも思います。が理由はどうあれ、実際に日本に来て肌で知ってもらえる事は良い事です。私もこれまで、外国人友人達を何度も観光案内して来ましたが、彼らと観光する事で、当たり前と思っていた事が、彼らの視点からだとまるで違う風に感じたり、それまで気づかなかった日本の良さを再認識したり、新たな発見が色々あって面白く思ったものでした。またどの国から来たかで、見る箇所や感じる事が違ってくるのも興味深い事です。例えば、イタリア料理が世界一美味しいと思っているイタリア人友人達が、日本のイタリアンが予想以上に本格的で、店によっては自国より美味しいとカルチャーショックを受けていた事もありましたし、フランチャイズ店ですらレベルが高く、サイゼリヤのトマトパスタなどはママの味がするとまで言った歌手の友人もいました。他にも古いお寺や最新のビルディングが同じ区域に存在している事(ヨーロッパの都市は大抵、旧市街、新市街に分かれています)、公共機関の乗り物が時間通りに来る事などに驚かれ、大きな駅で人がごった返している時にお祭りでもあるのかと聞かれた事もあります。中国人の友人は、どこもかしこも清潔で道にゴミが落ちていない、交差点で皆信号を守る、電車に乗る時にみんな順番を守る、と感心され、アメリカ友人達には、公共トイレにウォシュレットがあり、便座の上に動くビニールシートがある、どこで何を食べても美味しい、妊婦や障害者をあまり見かけない、など指摘され、その度に誇らしかったり、考えさせられたり。そうかと思えば、逆に私が彼らの行動にカルチャーショックを受ける事もありました。例えばレールパスがまだない頃に、1日目が東京、2日目は京都、3日目に広島へ行き、その翌日には東京に戻る、というような、ダイナミックな動線を聞いた時には、本当に驚いたものでした、が、よく考えたら私も卒業旅行で、ドイツのロマンティック街道1泊、別都市1泊、フランスに移動しパリ1泊、その後ミラノ、ベネツィア、ローマと1泊ずつ、と似たような事をしたなと、思い出して笑ってしまいましたが。旅とは言うまでもなく、見聞を広げ、世界を広げ、価値観を広げ、思い出を作る素晴らしいものです。ハプニングは確かにつきものですが、それに対処し乗り越える度に経験値が増え、ライフレッスンとなります。今後、日本は観光大国となっていくでしょうから、外国語表記を更に増やし、旅行者にも分かり易い案内を増やす事で、この安全で、人が親切で優しく、美味しいものが沢山の日本の素晴らしさが、今以上に世界に広がると良いなと思っています。

田村麻子=ニューヨークタイムズからも「輝くソプラノ」として高い評価を受ける声楽家。NYを拠点にカーネギーホール、リンカーンセンター、ロイヤルアルバートホールなど世界一流のオペラ舞台で主役を歌う。W杯決勝戦前夜コンサートにて3大テノールと共演、ヤンキース試合前に国歌斉唱など活躍は多岐に渡る。2021年に公共放送網(PBS)にて全米放映デビュー。東京藝大、マネス音楽院卒業。京都城陽大使。