英語上手は聞き上手から

岡田光世・著
CCCメディアハウス・刊

 本紙連載「ニューヨークの魔法」でお馴染みのエッセイストで作家の岡田光世さんが、このほど、英語力をどのように伸ばせるかについて、自身の体験に基づいてまとめた『ニューヨークが教えてくれた “私だけ”の英語“ あなたの英語“だから、価値がある』が出版された。

 岡田さんは、高校、大学、大学院と米国に留学し、語学力を磨いてきたが、「中学英語をきちんと自分のものにすれば、必ず話せるようになる」と言う。

 「私は東京の地元の小学校で英語を教え、マンハッタンでは幼稚園から高校までの学校で、日本語を教えた経験があります。こうした体験も含め、『英語』は、私の視野を広げてくれただけでなく、私の人生に対する姿勢、生き方そのものを変えました」と話す。実はこの本は、岡田さんが英語について語った初めての本でもあり、「私の英語人生を語り尽くしました」というほど、彼女の持っている英語の知識と習得テクニックを、惜しみなくこの一冊の本で披露している。

 岡田さんが、英語監修、後に原作を手がけた英語講座まんが『奥さまはニューヨーカー』は、漫画家の島本真記子さんとの共著で、1989年から1997年までの8年間、読売新聞の米国現地版「THE YOMIURI AMERICA」で連載された。研究社からタイトルを『アメリカ駐在物語』として上下巻が出たあと再び同社から新聞と同タイトルで上下、続いて幻冬舎から5冊文庫本が出るなどニューヨークを舞台にした生きた英語を学べるシリーズとして好評を博した。本紙でも2004年1月の創刊号から2018年までの14年間復刻連載した。

 同書では、「奥さまはニューヨーカー」と「ニューヨークの魔法」シリーズどちらも、教材としていかに役立てるか、という視点で取り上げている。

 常々どうして、岡田さんは英語が上手になったのだろうと不思議で、きっと英語が好きで、勉強して学んだ語彙力と知識と現地体験量の豊富さからくるものだろうと長年思っていたのだが、決定的なのは、「物おじしないで知らない人に平気で話しかけられる勇気を持ち合わせている」ことに尽きると随分前に確信した。公園のベンチで、地下鉄の座席で隣の人に親しく話しかけるのだ。人なつこいとでもいうか。初対面の見知らぬ相手から「自分の人生を全部、あなたに語っちゃったわ」とよく笑われるそうだ。きっと聞き上手なのだろう。

 同書には、教科書に出てはこない言い回しや単語、ニュアンスの説明がふんだんに書かれてはいるが、究極的には、岡田さん自身が言う「中学英語をきちんとものにした」あとに、岡田さんのように、知らない人に気軽に自分から話しかけられる「日本人が普通持ち合わせていない感性」をどう後天的に身につけるかを突きつけている。 (三浦)