職場再開における適正な準備と手順(続き)
従業員の医療情報に直接かかわる健康スクリーニングについて検査を実施するのであれば、全採用者および全従業員がその対象となりますので、ポジションや部門などによって実施したりしなかったりということは許されません。もちろんPCR検査は会社ではできませんので、指定したラボなどに行ってもらうことになります。体温測定は、一定の体温 (37.5C または99.5F) 以上あった場合、その日はオフィス内に入ることができず、自宅に直行してもらい安静と療養を促します。体温測定値は従業員の医療情報 (Medical Information) に当たりますので、他の情報とは分けて機密情報として厳重に管理することがADAで求められています。
ポリシーの作成は、一度にすべてのポリシーを同時に作ることは時間的にも難しいことですので、優先順位をつけて、必要とされる順に一つ一つポリシーを作成していかれることが現実的です。その意味では、職場再開になった際に必ずしてもらわなければならないソーシャルデイスタンシングポリシーやマスクなどの着用義務に必要なPPEポリシーは優先順位が高いといえるでしょう。ポリシーの作成はCDC (全米疾病対策管理センター) から出されている種々のガイドラインに従う必要があります。また自社内ですべてのポリシーを作るのが現実的ではない場合、外部のリソースを使って一気に作り上げてしまうというのも手であるかと考えます。ガイドライン作成に費用は多少かかりますが、職場の衛生管理ならびに従業員の安全対策を会社が真剣に取り組み、社内体制上でも整えていくという姿勢を示すことで、従業員も会社に対する安心感ならびに信頼感が以前にも増して持ってもらえるのではないかと察します。
最後に自身の健康に不安を覚えるハイリスク従業員、たとえば、既往症の経験者の人、65歳以上の人、障害を持つ人、妊娠されている女性などは、無理をして職場に戻ってくることに関しては抵抗感を持つ方がいるのは想像に難くありません。そのような従業員の方々とは、何が何でも職場に復帰させるということではなく、相互の対話方式プロセス (Interactive Process) を通じて、自宅勤務の継続などの適切な対応 (Reasonable Accommodations) を双方合意のもとにアレンジしてみていただくことを目指してください。とにかく、健康被害や障害物などがなく、従業員が安心して働くことのできる職場環境を提供することはアメリカにあるすべての雇用主の務めであることを連邦法であるOSHA (Occupational Safety and Health Act) で義務付けられています。コロナウィルス感染を契機に職場再開前にOSHAの原点に立ち戻って、職場の安全を再確認して、衛生管理を徹底するように努めてください。
(酒井 謙吉 パシフィックドリームズ社長)