5月3日、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF)は「日本の報道の自由度」世界70位を発表しました。民主党政権時の12位がピークで、以後急降下してきました。しかし、日本のメディアはRSFによる決定理由をほとんど報じていません。
一「日本は議会制民主主義国家であり、報道の自由と多元主義の原則が一般的に尊重されている。しかし、旧来の利害関係、ビジネス上の利害関係、政治的圧力、男女不平等によって、ジャーナリストたちは権力の監視役としての役割を完全に果たせないことが多い」が意訳されたり、無視されています。「旧来の利害関係」を「伝統(の重み)」と訳した記事まであります。
二 watchdog(監視役)という権力を監視し、情報を収集するという言葉もほとんど報じていません。英オックスフォード大学ロイター・ジャーナリズム研究所の2019年調査で「メディアが、力を持つ人やビジネスを監視し検証している」と考える人が、日本では世界38か国中で最下位の17%だったこととも関係します。
三 「既成の報道機関だけが記者会見や高官との面会を許可される『記者クラブ』制度」の説明にあたる部分を割愛しているか、『記者クラブ』制度自体を報じない記事もあります。
これまでも、他国には存在しない以下の実態が指摘されてきました。(1)報道機関のトップが首相と会食やゴルフをする。(2)放送法および電波法により、政府がテレビ局の放送内容を直接規制できる。(3)広告代理店やスポンサー企業の意向でメディアが権力の監視役ではなく広報役を務めている。
米国のBill Kovach他著のThe Elements of Journalism(「ジャーナリストの条件 時代を超える10の原則」)は「不偏不党や中立性はジャーナリズムの根本原則ではない。客観性とは中立性や、両サイドが同じになるようバランスを取ることではなく、取材対象や権力者からの独立である」と指摘します。 そして「ジャーナリズムの最大の目的は、市民が自由であり自治ができるよう、必要な情報を提供することである」。「市民もまた、ニュースに関して権利と責任がある」と結論づけています。
「報道の自由度」とは民主主義そのものです。日本の報道の自由度が高まるよう、海外日本人の皆さんのサポートをお願いいたします。
ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。