【人体の血液からマイクロプラスチックを発見。米企業が健康被害ないリサイクルに挑戦】

■22人中17人の成人や赤ちゃんからプラ粒子を発見

 学術誌「Environmental International」によると、人間の血液から初めてプラスチック粒子が見つかった。4年前には人の便や肺から検出された研究結果もある。マイクロプラ粒子が体内の入ると何が起こるのか?最近の研究で「赤血球の外膜に付着し、酸素を運搬する能力を制限する可能性がある」ことが分かった。

 オランダの生態毒性学者ベタック教授は、「ペットボトルで育った赤ちゃんは一日に何百万個もマイクロプラスチック粒子を飲み込んでいる。妊婦の胎盤からも発見された。胎児の心臓や臓器にも影響がある」と述べている。

 原因は、大量投棄されたプラスチックが海魚や山菜に蓄積され、人間の食物になるからである。プラスチック製のカップやフェイスマスクの使用も影響する。プラ投棄量は2040年までに倍増すると言われている。

■ 91%はリサイクルされていない現状

「プラスチックはリサイクル」と言われるが、実際には世界の91%のプラスチックはリサイクルされていない(2020年)。そのうち焼却は12%、残り79%は途上国の埋め立て地に送られるか、海に投棄されている。

※途上国での埋め立てから住民の健康被害も多発し環境の負の連鎖を引き起こしている。これを「環境的人権差別経済」ともいう。

■米スタートアップ企業、プラ投棄の建材リサイクルに挑戦

 プラスチックはリサイクルできないという固定観念を打ち破っているのが米ロサンゼルスのスタートアップ企業(ByFusion)だ。スチームと圧縮を組み合わせて健康被害のないBlocker(建材ブロック)に作り変え、フェンスやテラス、道路建材に再利用する。

 この活動は、プラスチックによる環境汚染を防ぎ、人の健康を守るとして注目されている。大量投棄されるプラゴミを再利用する成功事例となれば、持続可能な社会環境の再生への大きな貢献となるだろう。

■古市裕子

SDGs-NYスペシャリスト

(サステナブル経営×日系企業NY進出支援)NY Marketing Business Action, Inc.代表取締役。国連大学SDGs研究員。ジェトロNY17年勤務。著書【SDGsピボット戦略:欧米企業12事例集/SDGs×次世代×企業価値】https://www.amazon.co.jp/dp/B09NVMP2DF