警察官が語るアジアン・ヘイトクライム

JAAでオンラインセミナー

 ニューヨーク日系人会(JAA)が開催する第13回JAA春のサクラフェアーで、NY日本総領事館とNY日系ライオンズクラブ(伊藤リキ代表)の共催企画「邦人安全対策虎の巻」が29日(木)正午から1時間ZOOMによるオンラインで開催された。NY市警察(NYPD)の現役担当官が犯罪からの身の守り方などを含め、深刻な問題となっているアジア・コミュニティーの安全対策として講演した。 冒頭大橋建男領事部長が講演内容を各企業や団体に持ち帰って共有して欲しいと挨拶した。

 当日はNYPD情報部外交団リエゾンのカール・フェッファー警部補とトニー・マンサー刑事、ラシッド・エルカディ刑事がアジアン・ヘイトクライムの現状と対策について語った。英語の講演を総領事館の野﨑隆領事が解説した。

 それによると、今年のニューヨーク市内でのヘイトクライムの発生状況は、これまでに158件と昨年の101件から57件、56%増加している中で、アジア系が被害を受けた事件は68件で昨年の15件から53件、350%の大幅増加になっている。検挙率は35%から40%で残りは捜査中。

 被害にあった場合、容疑者の写真を撮影することは、たとえ背後からの写真であっても犯人を特定する上で捜査の立場からは非常に参考になるが、逆に写真を撮影することで状況を悪化させることもあるので、必ずしも良い結果になるとは限らないのでケースバイケースであるとした。警察に通報するなどの形で協力して欲しいと述べた。

アジア系ヘイトクライム特捜班は現在25人編成で11か国の言語に対応できる。メールアドレスはAsianHCTF@NYPD.ORG 、ツイッター@NYPDAsianHCTF) / Twitter となっている。

アジア特捜班に聞く

 ニューヨーク市警(NYPD)は昨年8月にアジア系へのヘイトクライムを専門に取り締まる特捜班(Asian Hate Crime Task Force)を設置、さらに現在私服警官を要所に配置して取り締まりを強化している。

 「被害を受けたら、英語が話せなくとも、ビザの有無にかかわらず、必ず被害届けを出して欲しい」と、特捜班インスペクターのトミー・ナン氏=写真=は強調する。

 「一部の報道によると、犯人たちはヘイトクライムの法に引っかからないよう黙って(憎悪用語を使わずに)暴力だけふるって立ち去ると聞くが」との本誌の質問に対しナン検査官は、「言葉を発しようと無言だろうと、暴力を振るえば警察側で状況を判断する。とにかく小さなことでも報告して欲しい」と答えた。

(ワインスタイン今井絹江)