薪火が香るメキシコ料理

 最近NYでは伝統の風味を生かした質の高いメキシコ料理店が目立つ。そのひとつが昨年6月に開店した「オショモコ」。開店5か月でミシュラン1つ星を獲得するほか、高い評価を得る話題店だ。
 オーナーシェフのジャスティン・バズダリッチ氏はカンザス州出身。調理師学校を卒業後、屈指のフランス料理シェフ、ジャンジョルジュ・ヴォングリクテン氏の下で9年間修業。薪火を駆使したイタリアン「ローマン」を経て、12年に薪火で焼くピザ店「スピーディ・ロメオ」を開店。その成功を踏まえ、「オショモコ」では薪火の魅力をメキシコ料理に表現している。氏いわく「オアハカ地方を訪れた際、野外マーケットに漂う薪火の香りに強い印象を受けました。薪火には、生来燻香を帯びた原産唐辛子や、トルティーヤの素朴な香りなど、メキシコ料理の風味を自然に引き立てる力があるんです」
 氏が各地を食べ歩いて学んだという品々を集めた約30品のメニューは、つまみ、前菜、タコス、メインディッシュから成る。一例は「ビーツのチョリソー」(13ドル)。薪火でゆっくり燻し焼きにしたビーツに唐辛子、酢、ニンニクなどを合わせたパンチの効いたソースを絡め、アボカドとポテトのフライとともに紫色のコーンを使った自家製トルティーヤに盛り込む。ヴィーガンながらしっかり満足感を与える一品だ。また「マグロのトスターダ」(20ドル)はメキシコへの中国移民がもたらしたという醤油でマリネした本マグロを、アボカドのピュレと一緒に焼いたトルティーヤに載せたもの。カリッとしたトルティーヤの食感とアボカドのクリーミーさが対照を生み、マグロの旨味を引き立てる。
 「これまでこの街のメキシコ料理は、カジュアルなテックスメックスか、一地方の料理にテーマを絞った高級店に分かれていた。その間を埋め、より多くの方々に多彩な伝統メキシコ料理の価値を知って欲しい」とバズダリッチ氏は話す。(ニューヨーク在住ジャーナリスト、片山晶子)

Oxomoco
128 Greenpoint Ave,
Brooklyn, NY 11222
TEL 646-688-4180
ディナー 17.30-22.00
(木22.30, 金土23.30まで)
ブランチ 月-金12.00-15.00
土日11.00-15.00 無休
www.oxomoconyc.com