グランドセントラル駅からハドソン川沿いを北上するハドソンラインに乗って約2時間、終点のポキプシー駅に到着する。一度聞いたら忘れない印象的な地名ポキプシーとは先住民族ワッピンガー族の言葉で「小さな水辺の葦で覆われたところ」と言う意味だとか。21世紀の今日、葦はすっかり姿を消したけれど、水辺の場所に変わりはない。駅を出て川に向かって坂を降りて行くと、正面にハドソン川と新緑の森を、右手に歩行者専用の高架橋「ウォークウェイ・オーバー・ザ・ハドソン」、左手にはルート44が通る「ミッドハドソン橋」を眺める。川辺に立って、この景色を眺めながら郊外の空気を胸いっぱいに吸い込むと、身も心も軽くなったような気がする。
■歴史
1686年に英国人とオランダ人入植者がワッピンガー族から一帯の土地を取得(幾らで、或いは何と交換したのかは不明)、その後入植者がどんどん増えて一大コミュニティを形成した。独立戦争時、ニューヨーク市に次ぐ第二の都市として栄えていたオルバニーに州議会を置くのは危険と判断、より南に位置するキングストンで議会を開催していたが、そのキングストンが英国軍の襲撃に遭い焼き払われてしまったため、一時期ポキプシーに議会が移された(1797年オルバニーが州都となる)。19世紀には立地を生かした海運業や製紙業、醸造業などで繁栄。また、風光明媚でNY市から近いため、アスター家やヴァンダービルト家などの富裕層が別荘を建てた。
■ウォークウェイ・オーバー・ザ・ハドソン
元々は1889年にポキプシーとハイランドを結ぶ複線鉄道橋として開通したカンチレバー(片持ち梁)橋で、開通当時は世界最長の橋だった。セメント材や木材、家畜、牛乳を運ぶ貨車のほか、ワシントンやフィラデルフィア、ボストンとニューヨークを結ぶ客車も通る重要な橋だったが、1974年に火災で通行不可となってしまう。長らく放置されていた橋は元の構造を残しつつ大規模な改修工事が行われ、2009年に歩行者専用の橋として生まれ変わる。同年、米国土木学会によって国定歴史建造物に指定された。高さ65メートルの橋の上から眺めるハドソン川の景色は圧巻、訪れる季節によって異なる景色が楽しめる。橋は朝7時から日没まで通行可。通行無料。ポキプシー側はパーカーアベニュー、ハイランド側はハビランドロードに出入り口があり、いずれも階段が無いので車椅子やベビーカーもOK。*橋の下の公園(Upper Landing Park)にエレベーターがあるが現在コロナ対策のため閉鎖中。https://walkway.org/
■リバー・ステーション
その名の通り、駅と川の間にあるレストランで、遠足の始めや終わりの腹ごしらえにぴったり。川に面したテラス席からはウォークウェイとミッドハドソン橋の両方を望む。料理は「普通」だが、ロケーションと眺めの良さで星をあげよう。(写真はクラムチャウダーとコーン&ロブスターチャウダー各8ドル)
River Station
1 North Water St. Poughkeepsie
電話:845-452-9207
月〜日11:30〜21:00
■クラフテド・カップ
ウォークウェイや駅からは少々離れるが、コーヒー好きの人に絶対おすすめのカフェ。香ばしく焙煎された豆を男前なスタッフが手際よく淹れる。カフェラテ小3ドル、中3ドル55セント、大4ドル5セントと言うリーズナブルな値段も嬉しい。各誌の大学ランキングで最難関とされるヴァッサー大学近くにあり、学生達で賑わっている。
The Crafted Kups
44 Raymond Ave. Poughkeepsie
*他に2店舗あり
電話:845-483-7070
月〜日8:00〜17:00