日本クラブ・JCCIコロナ対策オンラインで
誰が感染しているかもはや不明 大石公彦医師
医療崩壊避けられても油断禁物 安西弦医師
家庭で子供の孤立をどう防ぐか 加納麻紀医師
ビデオ診療主体だが外来も診察 カマール・ラマニ医師
新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが、世界中の経済活動や人々の暮らしに多大な影響を及ぼしている。パニックに陥らないためにも、私たちができる対策とは何か、万が一感染した場合にどうしたら良いのかなど、米国日本人医師会(JMSA)の医師が各専門分野の視点から語った。日本クラブが13日夜、ニューヨーク日本商工会議所(JCCI)、JMSAと共催して日本クラブ会員を対象に開催したオンラインイベントで述べたもの。参加した医師は安西弦氏(レノックスヒル病院医師、ニューヨークミッドタウン産婦人科院長) 、大石公彦氏(マウント・サイナイ病院医師) 、加納麻紀氏(東京海上記念診療所医師) 、カマール・ラマニ氏(一般内科・20イーストメディカル院長) 。聞き手は前田正明・日本クラブ事務局長代行・JCCI専務理事代行。
解説要旨次の通り(講義順)
コロナウイルスの寿命
大石医師は、新型コロナウイルスについて説明した。2019年新型コロナウイルスはヒトコロナウイルスの一種で、コウモリ、ジャコウネコ、ラクダ、センザンコウから人に感染したものとみられる。発熱、倦怠感、乾いた咳、食欲不振、筋肉痛、呼吸困難などの症状が感染してから6日後くらいから発症するが、全ての人に症状が出るわけではない。死亡率は2%程度。軽症、無症状の人はおそらく8割以上いるのではないか。また、新型コロナウイルスは、どの程度の時間安定して(感染能力を有して)いるかについては、空中では3時間、銅板では4時間、ボール紙では24時間、ステンレスでは48時間、プラスチックでは72時間。「現時点では、誰が感染しているか不明なので、ソーシャル・ディスタンスは大切。よく手を洗うように」とアドバイスした。
妊婦とコロナウイルス
安西医師はニューヨークの医療現場状況を解説した。現在、ニューヨーク市内の病院は、ほぼ全てがコロナウイルス患者用になっている。ICUベッドの増設を進めており、他の科はほとんど診療停止でコロナ病棟に配属されている。緊急性のない、すぐに命に関わらない手術はがんも含めて全てキャンセルになっている。今後の見通しは、感染の広がりは遅くなりつつある。いわゆる医療崩壊は避けられそうだ。しかし、思ったより予後が悪い病気なので油断は禁物だ。感染した人はどれくらいいるのかというと、マンハッタンの人口は162万人、現在のコロナ感染者数は1万4000人。診断が確立されているのは人口の0・7%。今回の第一波が終了した時点で米国の国民の97%は感染していない。妊娠と新型コロナウイルスについては、インフルエンザ、SARSなど呼吸器系のウイルスの感染症は、妊娠中に症状が重くなる傾向がある。今回のコロナウイルつについては、ICUが必要となったのは5%程度で全体的な数字と大差がなかった。データとして症例数が少なく、検査基準が統一されていない、妊婦は年齢的に若いので同年齢の妊娠していない人と比較したらどうかなどデータに限界がある。
子供の散歩全員マスク
加納医師は、家庭における子供のケアについて語った。子供が新型コロナウイルスにかかった場合は、大人よりも症状が軽いと言われている。症状がないこともあり、感染していることがわからずにおじいちゃんやおばあちゃんなど高齢者と接して感染させてしまうことが怖い。喘息や心臓病、抗がん剤などを服用している子供は感染すると重症化する危険性が高い。
自宅待機で気分転換で散歩に出ることもあるかと思うが、郊外なら6フィートの間隔を保てるが、マンハッタンや感染の度合いが高いブルックリンやクイーンズは人とすれ違うことも多いので、外出時は2歳以上の子供には全員マスクをつけさせてほしい。外出して帰宅した時は必ず手を洗うように。食料品店で買い物をした後のエコバッグも外に出しておき、カウンタートップもよく拭いてほしい。子供の感染が疑われたが場合は、子供を孤立させるのではなく、家族がマスクして接するなどベストを尽くすしかない。
市販薬服用の注意点
ラマニ医師は、臨床医の立場からウイルスの特性や診療について語った。新型コロナウイルスは「熱があり、疲れやだるさが時々あり、咳もよくあり、体の痛み、喉の痛み、頭痛を時々伴うが、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、下痢はほとんどない。一方、インフルエンザの場合は、鼻水、鼻づまり、下痢が時々ある。風邪の場合は、頭痛と熱はほとんどない。
新型コロナウイルスの疑いがあるときは、まずはかかりつけの主治医との相談・診療を勧める。緊急の場合を想定して事前に自宅近くの病院を確認しておくことも大切だ。
ニューヨーク州保健局、保険会社が遠隔治療を奨励しているので、4週間前からビデオ診療を開始した。保険会社によって新型コロナウイルスの診療、治療はすべて自己負担なしのところもある。必要がなければ、感染のリスクを下げるために救急病院への訪問は避けるべきだ。ビデオで診療できないことももちろんあるので、診察室での診療も入室前の検温、退出後の消毒など慎重に行っている。
発熱した時は、一般の市販薬を服用しても構わないが、今コロナウイルスで言われているのは、イブプロフェン系(例・アドビル)ではなく、アセトアミノフェン系(例・タイレノール)の方が安全だと言われている。「服用するならアセトアミノフェン系を」と述べた。