手書きの五線譜で世界魅了

作曲家
清水チャートリーさん

 過剰な持続と反復を用いた数々のコンセプチュアルな作風を持つ現代音楽作品で、世界各国の楽団や演奏家から委嘱を受ける清水チャートリーさん。5月3日、作曲家仲間とピアノによる新作演奏会を企画した。「音楽は時間芸術」と言う清水さん。奏者、演奏会場、観客数などで簡単に豹変する。「現代音楽は、観客ありきの音楽じゃない」と前置きしつつも、作曲家らの発表の場を創出し、異なる曲に興味を持つ客が集まることでの相乗効果を期待する。
 大阪府出身。国立音楽大学を首席で卒業し、同時に有馬賞を受賞して奨学生としてコロンビア大学芸術大学院修士課程を修了、三菱財団フェローとしてピッツバーグ大学で研究活動をした。2年前にフランスの山間の小さな村で曲を発表した時、村人が全員来てくれ村長が現代音楽について熱く語った。欧州での現代音楽の定着度を実感。「20代のうちに欧州を経験したい」との思いを強くし、2018年からはドイツのドレスデンに住む。とはいえ、月の半分は他の地に飛び、ニューヨークにも数か月おきに滞在する。
 他人と話せないシャイな高校生の頃、幼少期から習っていたピアノを演奏したら大拍手を受けて「音楽はコミュニケーションになる」と感じた。即興、録音そして作曲へと興味が広がった。清水さんは、「音楽には(1)拍子記号のようなメトロノミカルな時間性、(2)心の中で数えるような主観的(コノメトリカル)な時間性、(3)多様な演奏環境を反映した偶然性を伴う時間性の3つがある」と説明する。「笙(しょう)はこの(2)にあたり、その楽譜を(1)で書く」ことなども試みる。笙は大学時代に習い始め、西洋音楽にない日本楽器の特殊奏法に関する記譜法や楽器法について世界中の大学などで特別講義も行う。
 作曲の醍醐味を「自分が美しいと思える緻密さを追求できる幸せを感じる」と話し、「こんなふうにいつも手で書いています」と、書きかけの美しい五線譜を広げて見せてくれた。(小味かおる)