海外邦人子女教育が大転換

在外教育施設振興法が成立

日本人学校と補習授業校
国際化向け大きく舵切る

 海外に設置されている94校の全日制日本人学校と220校の補習授業校に対する教育基本方針を抜本的に見直した在外教育施設振興法が昨年6月に成立した。受け入れる児童生徒の枠組みを広げて現地化を進め、教員の採用もJETプログラムなどで訪日経験のある者を積極的に活用し、国としても財政的に支援する。また全世界で運営される民間の私立学校も、ニューヨークの1校を含む7校が対象となる。

 公益財団法人・海外子女教育振興財団の綿引宏行理事長がこのほど来米し、シカゴとニューヨークの日本人学校を視察し、現地の教育審議会など設置団体やニューヨーク日本総領事館、国際交流基金、自治体国際化協会、NY日本商工会議所など関連団体を訪問して内容を説明して回った。

 日本企業が国際展開する中で、事業の現地化が大幅に進み、世界的に駐在員が減少する中で、学校経営を安定化させながら海外の教育現場でグローバルな日本人をいかに育成していくかという課題がある。

 その解決策として大きく分け4つの目標を設定した教育振興法が制定された。まず第一に「次代の社会を担い、国際社会で活躍することができる豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に資すると共に国際相互理解の増進に寄与することを目的とする」こと、第二に「在外教育施設の設置者などの間の連携の強化、そのほか必要な整備に努める」こと、第三に「国は、在外教育施設を拠点とする国際的な交流の促進が図られるようにする」こと、第四に「在留邦人の子以外の者であってその教育を受けることを希望するものを受け入れる」ことなどが法律として盛り込まれた。

 この法律により、これまで海外の日本人教育は文部科学省と外務省の専権事項だったが、今後は総務省、経済産業省が加わり4省体制で海外の日本人教育の国際化を推進する。具体的には、関係団体として国際交流基金、自治体国際化協会、日本貿易振興機構(ジェトロ)、海外子女教育振興財団の4団体が連携して応援していく包括協定を昨年9月1日に結んだ。

 綿引理事長は「50年前に政府が海外にいる在留邦人の子供のために、現地の日本企業が出資母体となる運営組織を作って私立学校を設立し、中身は日本の文部省・現文科省から教員を派遣して公的な学校経営をしてきた。形は私立で規則は公立のようなことをやっていたのではグローバルな人材は育たない。現地がもっと伸び伸びと教育できるシステムに変えていかないとならないと言う理由から法律が設置された」と話す。

 教育振興法には、施行連携対象校として早稲田渋谷シンガポール校、西大和学園カリフォルニア校(全日制)、慶應ニューヨーク学院(高等部)、帝京ロンドン学園、立教英国学院、スイス公文学園高等部、如水館バンコクの海外私立校7校も含まれた。

 同財団では、既に行われた全世界日本人学校94校の理事長・運営委員長会議に続いて、2月9日・10日の両日には補習授業校220校の同会議を行う予定だ。またその後には私立7校の代表者の意見を聞き「世界の教育設置者の要望」として取りまとめ、6月の自民党議連開催で海外の共通の項目として提出する方針だ。また今回対象外となった幼児部の教育については5年後に見直す検討課題とされた。

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