小池 康仁・著
ダイヤモンド社・刊
運命を変える東洋哲理、2500年の教え、と副題のついた本書は、陰陽五行論という真理を追求する日本古来の学問の解説書だ。自分とは何者か、そして自分と接する他者はどういう人なのか、そして今という現実の流れの中で、人や物や世の中の出来事がどう動いていくのかを人類の歴史の中からいくつかの法則を導き出して紐解き、政治やビジネス、人間関係に活かそうとする連綿と日本に存在する思想哲学の一種だ。
その考えを「帝王学」として広め、ニューヨークでこれまで対面とオンラインでセミナーを開催してきているのが、著者の小池康仁さんとその講師陣だ。小池さんは、もともとは企業で働く組織の人だった。一部上場企業に入社して、IT、戦略会計、人材育成分野のコンサルタントとして主に、上場企業を中心に10年間コンサルティングに従事、国内大手メーカーの教育機関に就職後、国内外の人材育成業務に携わった。その後、独立起業し、現在は数十社の会社を統括する経営者であり、経営アドバイザーとして活躍中だ。また、東洋哲理思想の帝王学・陰陽五行論を経営に活かす第一人者として現在日本全国で2000人以上に指導している。
帝王学とは人生を改良する公式で、人には持って生まれた才能・資質、変えることのできない要素(宿命)がある。それに後天的なあり方、生き方、捉え方を適応させる「環境」が加わり、生き方と考え方で人生が大きく変化する(運命)ができるとする方程式を学ぶ。双子の兄弟、姉妹が生後すぐに離れ離れになり、全く異なった環境で育った場合、生まれ持った素質、原石が同じでも、磨き方で別人のような人生を歩むことは想像に難くない。後天的な資質の発見、研磨を読み解く帝王学は「多様性が当たり前の時代にブレずに生きるために必要」と説く。
そのための帝王学の原理原則として、五徳という考えがある。「仁徳」仕事=見返りを求めずに尽くす。「義徳」成果=誠実に生きる、裏切らない、筋を通す。「礼徳」希望=綺麗な言葉使いをする、長幼の序を弁える。「智徳」使命=聡明な勉強を自ら率先して行う。「信徳」魅力=信頼を得て人心掌握、影響力を放ち唯一無二の存在になる。要約すると「仁」=守る、「礼」=伝える、「信」=引き寄せる、「義」=攻める、「智」=学ぶことを本書で紹介している。帝王は戦わずして勝つ。敵を作らないという学問でもある。ビジネスや人間関係で参考になる考え方と言える。
本書は、著者の小池さんと人生の先行きになかなか自信の持てない一人の若者との問答形式で人生の絡繰(からくり)や運命を変えていく方程式を分かりやすく解説しているが、実際の学問では、規則性のある乱数表のようなものを読み解く少し難解そうな読解方法を身につけ、自分や現代社会の位置付けを知ることができるようになるのが本来の目的だ。帝王学セミナーをNYで何度か取材して誰にも存在する天中殺の受け止め方を知った。「ガードレールのない不安定な細い道のりを歩いている時期」と理解することで、さまざまな試練や日常の苦しみも客観視できた。運命は生き方次第であると人生観が前向きになる一冊だ。(三浦)