その11:ミズーリのガスコナーデ橋を守れ!

魅惑のアメリカ旧国道「ルート66」をフォーカス

 ルート66ファンの皆さん、こんにちは! 2020年も早いものですでに2か月目に入ってしまいました。相変わらず東京は暖冬が続いていますが、ニューヨークの皆様はいかがお過ごしでしょうか。先日の予報では2月は厳冬に戻ると言っていましたが全くその気配は見えず、やはり地球温暖化は進んでいるように感じます。とは言え、ルート66のシーズンはもうちょっと先。先月号でお伝えしましたように、イベントが春ごろから始まるルート66はまだ「冬眠期間」ってわけです。そんななか、ひとつ悲しいニュースが飛び込んできました。それは過去15年にわたってイリノイ州ルート66の発展に尽力した「Illinois Route 66 Blue Carpet」がその役割を終え、解散することになったというものです。その兆候を全く予想もしていなかったので、まさに寝耳に水という状態でニュースを聞いてびっくりしました。非常に残念ではありますが、結果として同地域のツーリズムビューローに今後の活動を譲渡するという前向きなものに進んだ結果ですので、過去5年超に渡って代表として同団体を引っ張ってきた、筆者の大切な仲間であるCheryl Eicher Jettさんには心から敬意を表すると共にお疲れ様です、と伝えたいと思います。
 さて、今月の「魅惑の旧街道を行く」シーズン③ 第11話は、少し昔の話になりますが、筆者もがっぷり四つ? で関わっているルート66沿道の各アソシエーションやツーリズム団体の活動をひとつ紹介したいと思います。
 ミズーリ州ラクレード郡ヘイゼルグリーンという小さな町の郊外に「ガスコナーデ橋」という橋があります。その橋は現在、老朽化が進み車両通行止めになっており、自転車や人が徒歩で通行することがかろうじてできる状態です。ガスコナーデ橋はルート66の歴史として同州下では非常に重要な文化財ですが、2014年12月、同州運輸局が修理または建替え資金の欠如を理由に当面の通行封鎖を勧告したのです。同運輸局の査定では修理するには約1億円程度の資金が必要であり、州財政を鑑みれば当面その「順番」は廻ってこないというものでした。しかし問題はそれだけでは済まず、修理したとしても構造そのものが老朽化したうえ現在の規制に合っておらず、通行できる車両の重さも制限されることから、解体→建替えという図式まで議論されるに至りました。
 そこで立ち上がったのがミズーリ州セントルイスの「Roamin’ Rich」こと、Rich Dinkela氏でした。「REPAIR,DON’T REPLACE」をスローガンにオリジナルの橋を残すことに意義を唱え、ルート66愛好家たちを中心に橋を守る運動を展開したのです。Dinkela氏はルート66の仲間内でもその存在感とリーダーシップは目立っており、ドローンを使ってルート66を上空から撮影することにも挑戦しました。それによって今まで目にすることがなかった側道や景色を私たちは映像を通して知ることができました。そんなDinkela氏が音頭を取って2015年春に初めてラリーウォークを主催、ガスコナーデ橋を守る意思を鮮明に群や州に対してアピールしました。
 筆者も日本のアソシエーションを運営する身としてDinkela氏とも親交があったため、彼らの活動に賛同し、第2回目である16年4月に行われたラリーウォークに参加しました。当時そのイベントの開始時間は正午の予定でしたが、余りにも天気が良いせいか、朝10時を回った時点ですでに大勢の人が集結。多くのクラシックカーに乗った人達が、まるで暴走族の大集会のように集まった光景は鳥肌ものでした。
 この活動は地元のテレビ局や警察にも伝えられ、イベントは予定時間をちょっと早めた感じで始まりました。もちろん州の関係者、自治体のリーダー、カウンティ(郡)の役人など、さまざまな人達が参加し、「壊さずに修復を」のスローガンのもと、声高に橋の重要性を訴えました。
 途中、私もDinkela氏の誘いに乗っかり、大勢の人たちが見守るなかでルート66日本アソシエーションの紹介と賛同の意を檀上でスピーチする機会ももらい、はるばるカリフォルア州より車を飛ばして参加した意義が十二分にあったものとして終わったことを憶えています。このイベントの結果、州政府は解体を見送ることになったので、私たちの活動の効果は充分にあったと思います。
 その後、ガスコナーデ橋の問題は紆余曲折ありましたが、昨年よりミズーリ州ルート66アソシエーションの会長に就任したDinkela氏は橋の所有権を協会が引き継ぐという提案をアソシエーション理事会として承認を取り、同州運輸省と交渉する計画を立てています。同州運輸省は新しい所有者を4月20日までに見つけるよう通達しているのです。ルート66日本アソシエーションとしてどの程度の貢献ができるかは未定ですが、Dinkela氏の行動に敬意を表するとともに、可能な限りのサポートをしていきたいと思います。
 ルート66で行われる各イベントも素晴らしいですが、皆さんももし興味があれば、このような活動に参加することによって、さらにアメリカとルート66の歴史に触れ、より深い愛着が芽生えるかもしれませんよ。ルート66の門戸は誰にでも開いています! それではまた来月、お目にかかります!

(後藤敏之/ルート66協会ジャパン・代表、写真も)