医療保険料は上がり続けるのか?
カイザー・ファンデーションは「雇用者が提供するベネフィット調査のレポート」を発表している。「2020年雇用主ヘルス・ベネフィット調査」が2020年10月8日に発表されているので、注目すべき数字を確認してみよう。
▼下記の各項目のFigure(数字)は次のリンクのスライドの数字を示している。
(1)医療保険料は1999年から2020年の約20年間で約3.4倍
医療保険料の推移を見ると、1999年に従業員1名の平均年間保険料が2,196ドルであったのに対し、2020年は7,470ドルと約3.4倍に上昇している。(Figure1)
(2)年間の医療保険料上昇率は平均4%
2018年5%、2019年5%、2020年4%と上昇率は少し落ち着いてきている。但し、個別のケースを見ると10%程度の上昇が起こっているところもある。(Figure2)
(3)平均免責額(Deductible)は303ドルから1,364ドルへ
全体の平均免責額は2006年の303ドルから2020年の1,364ドルへ約4.5倍になっている。(Figure6)
(4)物価上昇率との比較
2010年から2020年の10年間で物価は19%上昇しているが、家族の年間保険料は55%の上昇。免責額は111%の上昇となっている。(Figure 7)
(5)自己負担割合い
2020年の平均は従業員1人の年間保険料7,470ドルに対して、従業員負担平均額は1,243ドル。約16.6%を自己負担している数字になっている。
▼下記のリンクはInteractiveになっているので、関心のある数字の比較が可能なサイトである。
(6)2021年の動向
2021年の動向も、企業調査を見ると約5.3%の保険料の上昇を見込んでいる。
また、2020年のパンデミックな環境の中で、遠隔診断 (テレヘルス)が多く導入され、またそれを活用する機会が増えたと思われる。テレヘルスの活用は今までオフィスビジットで使われていた費用を削減するという意味では、2021年も期待できるサービスである。
2020年の大きな特徴としてはメンタルヘルスのベネフィットも注目を浴びた。COVID-19の感染者が2020年年末に向けて増え続け、ロックダウンの状況が継続すると2021年も従業員のメンタルヘルスをサポートするためのベネフィットは重要になってくると思われる。
(7)今後の医療費削減に向けて
医療保険の5大コストは下記の5つの治療が影響を与えている。
1.腰痛、膝と股関節の置換術などの筋骨格系の問題。
2.がん。
3.心血管(心臓)疾患。
4.糖尿病。
5.リスクの高い出産/新生児集中治療。
特に1~4のカテゴリーに入る病気はできる限り事前の予防によって改善を期待できる項目である。従業員の健康のためのプログラムも引き続き検討し、医療費のコストをできる限り下げていくことが、今後の保険料削減に大きな影響を与えるだろう。
引き続き皆様の安全と健康、そして、可能な限りのビジネスの再興をお祈りしております。
(山口 憲和 Philosophy LLC 代表)