SERI ~ひとつのいのち、ミュージカル動画を上映

「実話の舞台、NYの皆様に見ていただきたかった」

森永代表理事

 日本を拠点に活動を続けている一般社団法人 TruBlue (東京都杉並区、森永裕一郎代表理事)が11日夜、マンハッタンのスカンジナビアハウスで『SERI 〜ひとつのいのち』のミュージカル舞台動画上映会を開催した。

(写真上)大勢の日米市民が集まったマンハッタンの会場

 ニューヨークで誕生した、目が見えず、話すこともできない少女「千璃(セリ)」を巡る実話をミュージカル化した作品で、昨年秋に東京と大阪で全 16 公演が上演された。原作から色々な視点の葛藤を抽出し、さまざまな立場の人にメッセージを届けようと試みた同作品への評価は非常に高く、再演を期待する声が多く寄せられている。そのなかで、まずこの作品を実話の舞台となったNYの人々に届けたい、そこから発信されるメッセージをまずNYの人たちに受け取ってもらいたいという関係者の強い想いが重なりこの上映会が企画された。

 同作品は、障害児を異国で育てる苦労、自身の心と身体との戦い、友人・家族との葛藤、娘・千璃の誕生にまつわる医療裁判、繰り返される娘の手術などが描かれる。

上映後、来場者と抱き合う倉本さん

 原作『未完の贈り物』(2012年)には、母であり異国の地で働くキャリアウーマンとしての倉本美香さんの視点から実話の手記の形で千璃を取り巻く8年間の話が綴られている。ミュージカル舞台化では、その千璃自身が感じたであろう事に想像を巡らせ、千璃とその母である美香、父の丈晴の親子3人を通し、人と人が共感し、共存することの本質についてのメッセージがちりばめられていた。出演は、山口乃々華、奥村佳恵、和田琢磨、植本純米、小林タカ鹿、樋口麻美、辰巳智秋、内田靖子、長尾純子、小早川俊輔。上演時間125分。司会進行はFCIキャスターの久下香織子さんが務めた。

 主催した森永代表は「実話の舞台であるニューヨークの人に見てもらいたいという気持ちを以前から持っていた。2025年には日本で再演も計画しており、映像も、今回は上映を前提とした動画ではなかったので、再演では動画上映用の映像も新たに作りたい」と話した。

ミュージカルの舞台出演者

 作品の主人公は娘の千璃さんだが、ストーリーを牽引する主役はなんといっても母親の美香。そのモデルで、原作を執筆した倉本さんは会場で「本は自分の思いを書くことでストレートに担当医への怒りをぶつけたが、舞台で演出が加わることで第三者の視点から、相手の医師の立場なども客観的に冷静に描くことができた」と話した。

 今回の上映に合わせて来米した演出家の下司尚美さんは「カーテンコールを迎えた時、まるで生で観劇していたかのように暖かい拍手をいただきました。美香さんが宿した灯りを受け取り、全員で見つめ、大切に東京と大阪にお渡しました。そして一年が経ちニューヨークでお客さまの心にそっとその明かりが灯ったことを客席から感じ、その瞬間一緒に過ごせた事をとても喜ばしく思っています」と述べた。

 来場者からは「障害を持つ子どもの親は、勇気をもらえる作品だ」「話は知っていたが現実に親が直面する苦悩を見るのが怖くて避けていた自分がいた。が、今回作品を見て、親の強さだけではなく、子供の障害で絶望の縁に立つ親を救ったのは、実は子供自身であったことにも感動した」という声が聞かれた。