告発の鍵を握る援軍 Bombshell

同じエレベーターに乗り合わせたメーガン(セロン)、グレッチェン(キッドマン)、ケイラ(ロビー)、写真左から

 2016年、フォックス・ニュースを巻き込んだセクハラ・スキャンダルの実話ストーリー。職場や業界での地位で優位に立つ男性がセクハラで女性を食い物にする現実を実際に起こった事実に基づいて描き出すパワフルな展開だ。華やかなテレビの世界を背景に深刻な社会問題を提起するエンターテインメント要素も取り入れた作りだ。
 告発されたのは1996年に開設されたフォックス・ニュースの創設者でありCEOのロジャー・アイレス。メディア・コングロマリッド、ニューズ・コーポレーション率いるルーパート・マードックの号令の下、リベラルのケーブルニュースCNNに対抗するアメリカ保守層向けニュースという位置づけだ。
 アイレスに扮するのは映画、舞台、テレビと幅広く活躍するジョン・リスゴー。身体も顔も一目見ただけではわからないほどの特殊メイクで役に挑戦。メイク担当は「Darkest Hour」(2017年)でゲイリー・オールドマンをウィンストン・チャーチルに仕立て上げアカデミー賞主演男優賞に導き、自らもメイクアップ&ヘアスタイリング賞でオスカーを手にした辻一弘。
 アイレス告発の先陣を切るグレッチェン・カールソンにニコール・キッドマン。人気キャスター、メーガン・ケリーにはシャーリーズ・セロン。この二人の実在人物に加え、実在の数人の体験、情報を一緒にしたフィクション・キャラクター、ケイラにマーゴ・ロビンスというトップレベルの女優三人が顔をそろえる。監督は「オースティン・パワーズ」シリーズのジェイ・ローチ。
 権力を利用したセクハラや性的暴行では大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインや俳優ビル・コスビーなども有名どころでしかも氷山の一角。告発者がかかえる不安と圧力、自分の夢をかなえるために権力に屈したことへの当事者の屈辱、加えて、働くために保守系を装い同僚らにブレンドインする隠れリベラルやゲイなど社会を包み込む人間模様も作品の魅力だ。1時間58分。R。 (明)

https://bombshell.movie/videos/bombshell-movie-official-trailer


■上映館■
Regal Union Square Stadium 14
850 Broadway
AMC Lincoln Square 13
1998 Broadway