文楽人形遣いの吉田勘彌らが1日夜、アッパー・イーストサイドのシアター・アット・セント・ジーンで文楽のレクチャー公演を開催して、満場の観衆の拍手喝采を浴びた。
同公演は、日本文化をニューヨークで紹介している能ソサエティー(代表:ブテイエ節子)が主催。まず、目出たい演目である「三番叟」が演じられ、続いて人形劇研究者であるハンター大学のクラウディア・オーレンシュタイン教授が文楽の歴史などをスライドを交えて解説した。3人で1体を繰る人形劇は世界的に珍しく、「文楽スタイル」として世界の人形劇や演劇に取り入れられているという。そして、吉田が桐竹紋臣と桐竹勘次郎とともに、頭部や裸の人形を手にとって繰り方を説明したり、他の2人にどう動きの意志を伝えるかを見せたりした。
休憩を挟んで、「伊達娘恋緋鹿子」の「火の見櫓の段」が演じられた。舞台に置かれた火の見櫓はニューヨーク在住のアーティスト、滝澤昌樹が制作。吉田が、「ニューヨーク公演のために人形の鹿の子絞りの着物を知人に頼んで仕立てた。また、今回特別に創られた櫓で初上演する」と話すと、拍手が沸き起こった。
文楽は、人形、義太夫、三味線の三つの融合芸能で、今回は人形遣いだけの公演という制約があったものの、「三番叟」では日本では決して見られないという足下の動きを隠さずに演じたり、講義では手許が分かるようにカメラで大写しにした映像を流したり、「伊達娘恋緋鹿子」上演中は英語字幕が用意されたりと、ニューヨーカーに少しでも文楽を楽しんでもらいたいと細かい配慮が随所にみられた。代表のブテイエさんは、「文楽はニューヨークのみなさんに大人気で空席待ちがでるほどの反響だった。芸能の成り立ちを知ることで理解を深めていただけたならうれしい」と話していた。観客も、「リンカーンセンターで観たことがあるが、動かし方などを実際に見られて本当によかった」「足の係の人は中腰で本当に大変そうだった」などの声が聞かれた。
今回のニューヨーク滞在では、ハンター大学やペンシルベニア大学、リセ・ケネディ日本人学校などでもレクチャー公演を行い、ラママ劇場では演劇人を集めた講習会も実施した。(小味かおる、写真も)