ニューヨークで20年間、現代舞踊家として活躍しNY大学で講師を務めた田中いづみ氏が2日、東京江東区の公会堂「ティアラこうとう」で舞踊作家協会主催「〜21世紀の風伝(ことづて)〜 今、再びクロスオーバー」を公演した。 (写真上:田中氏と花柳氏のコラボレーション新作「水の星」から)
舞踊作家協会は隔月で公演を行っている。219回目の今回は同協会会員の田中氏と日本舞踊の花柳面氏が芸術監督として企画し、2人が韓国、スペイン、中国の舞踊家3人と創設したグループ「peace by dance」が、コラボレーションとソロの全4作品を披露した。
田中氏は2000年から地球環境を危惧した作品を発表しており、ソロの新作「黄色い空」では、明るさを抑えた照明の下、シンプルな薄い紫の上下衣装を纏い、温暖化が進むなかでの葛藤や戸惑いを表現した。なぜ「黄色」なのかという問いに対し田中氏は「汚染で淀み、この先どうなるかわからない、現状ではありえない空気の色として黄色と表現し、生きるために不可欠な空気が変わらないで欲しいという思いを込めた」と解説している。
4作品目「水の星」は5人のコラボレーションで、「宇宙の漆黒の闇のなかを ひっそりまわる水の星(地球)」で始まる詩人、茨木のり子の同名の作品が元になっている。5人は白に統一した各ジャンルの衣装で、前半は、同じ振付でありながらもそれぞれのジャンルの特徴的な舞と表情を活かした「孤独さ」、後半は、公演名「クロスオーバー」が意味するように、誰もが国や文化を越えた地球人であることを表現した。
新型コロナウイルス感染の緊急事態宣言で公演の中止が相次ぎ、田中氏にとって観客を入れての公演は昨年2月以来、約1年8か月ぶりとなった。今年5月には、同氏が率いるダンスアカデミー「石川須妹子・田中いづみダンスアカデミー」(東京都練馬区)の発表会を無観客で行った。コロナ禍で多くの芸術家が動画配信などを選択するなか、田中氏は「舞台で、観客の前で踊ることが醍醐味でありベストだと思っている」と話している。 (浜崎都)
田中いづみ=石川須妹子・田中いづみダンスアカデミー主宰。文化庁芸術家在外研究員として渡米。NY大学大学院舞踊教育学科にて修士号を取得、元同大学講師。共著に『現代舞踊のパイオニア』『作舞の動機と手法』。