風の環、仙台からNYへ

コンサート日米を結ぶ

 仙台で5日行われた第13回風の環コンサートは、大成功だった。コロナ禍でニューヨークでのコンサートが不可能となったため仙台に場所を移して開催された今年の風の環コンサート。ニューヨークで活躍しているソプラノの田村麻子、バリトンの門間信樹、バイオリンの大曲翔らが仙台に集結。ガーシュイン、バーンスタイン、バーバー、ビリージョエルなどのニューヨークに係わるアーティストの名曲を次々と披露した。ボストンで活動していた仙台出身のジャズ作曲家・ピアニストの秩父英里も特別参加。

  また仙台の合唱団「萩」のメンバーで東北大学男声合唱団OBの有志がおよそ半世紀ぶりにガーシュインのポギー&ベスを披露した。例年風の環コンサートのホストとして参加しているニューヨークの混声合唱団ジャパン・コーラル・ハーモニー「とも」や風の環少年少女合唱団はビデオ演奏で参加し、コロナ対策のもとで埋め尽くした聴衆の心を掴んだ。主催はニューヨークのNPO法人「9・11風の環メモリアル・コンサート」(白田正樹代表)で、米同時多発テロ犠牲者追悼を目的に2008年から毎年開催し、2011年以降は、東日本大震災犠牲者も追悼している。

 チケット代3000円のうち1500円は、ニューヨークで医療従事者、警察署、消防署、高齢者施設のサポートを続けているニューヨーク日系ライオンズクラブに贈られることになっている。ソプラノ歌手の田村は、このコンサートのため10月初旬から日本入りした。ほかのアーティストも3月から日本にいたので実現した。

「自粛」はしても、「萎縮」はするな

白田正樹

 コンサートを終えた主催者代表の白田さんは、ニューヨークの読者に日本から次のコメントを寄せた。

 「13年続けてきたコンサートをこんなコロナごときで諦めたくないという『意地』のようなものから企画がスタートしました。アメリカからのアーティストは皆二つ返事で出演をOKしてくれました。日本で声をかけた方からは『こんな時期に?』と断られた人もいます。しかしコロナの状況はアメリカから比べたら日本は比べ物になりません。特に地方都市の仙台なんかはそうです。私が今回言い続けたのは『自粛』はしても『委縮』はするな、ということです。それを実践するためのコンサートでもありました。ガイドラインを守ってやれることはやるべきです。このコロナの脅威もだいぶ全体が見えてきました。感染力は強くても致死率は通常のインフルエンザより圧倒的に低いのです。経済面だけではなく社会・文化・芸術面でも活動を再開していかないとそれによる影響の方がコロナより怖い。コンサートを終わって、その自分の信念が正しかったことを確信しています。『白田さんのお陰でまた自分たちの活動も再開したくなった』『とても刺激になった』という声を随分いただきました。

 NYの風の環の子供たちやJCHの演奏をビデオにまとめて会場で放映したこと、アメリカとスペインでライブで同時配信したこともこの延長にあります。やれる範囲で実行してみてそれを共有することの大切さを改めて実感したこと、そして新しいスタイルのコンサートのあり方を模索するという意味でも有意義だったと思います。とにかく今は『やってよかった』というのが実感で、それを後押ししてくれた人たちに本当に感謝したいという気持ちです」。

       (原文まま)