住民の悲痛を世界に伝える A Private War 

シネマ試写室

戦場ジャーナリストとして知られ、2012年シリア取材中に爆撃を受け命を落としたマリー・コルバンの伝記ドラマ。
作家マリー・ブレナーによる「Marie Colvin’s Private War」(ヴァニティフェア誌掲載)を「City of Ghosts」(ラッカは静かに虐殺されている、17年)などドキュメンタリー映画の制作・監督マシュー・ハイネマンが緊迫感と迫力みなぎるドキュメントドラマ風に仕上げた。
むろん戦場シーンは多いがコルバンの人となりを描き出す内容で、バリバリのジャーナリストであると同時に、そこには恋もすれば遊びもする魅惑的な女性が浮かび上がる。防弾チョッキの下にイタリア高級ブランド、ラ・ペルラの下着をつけているのも「自分の死体が掘り起こされた時、印象的じゃない?」という彼女特有のシャレだ。
コルバンに扮するのはイギリス女優ロザムンド・パイク。「ゴーン・ガール」(14年)でアカデミー主演女優賞にノミネートされたが、本作はそれ以上にパイク本来の演技力を十二分に発揮した作品といえ、ノーメイクに近いルックスでリアル感を出す。共演はスタンリー・トゥッチ、ジェイミー・ドーナンら。
ニューヨーク・クイーンズ出身のコルバンはイェール大学卒業後、UPIを経て1985年に英紙サンデータイムズ記者となり、国際情勢を専門にレポート。チェチェン、コソボ、シエラレオネを含む数々の紛争地に入り、凄惨な実情と住民の生の声を伝え続けた。米国のリビア爆撃後、カダフィ大佐にインタビューした最初の記者でもある。
コルバンは2001年、スリランカ内戦取材中、LTTE(スリランカ反政府組織)支配地区を移動途中、政府軍が発射したロケットランチャー爆撃余波で左目を失明。以来、海賊のような黒のアイパッチをし、それが彼女のトレードマークになった。長い間、PTSD(心的外傷後ストレス障害)にも悩まされたが紛争地を恐れることはなかった。「権力者の決断一つでいかに普通に生活を営むはずの人々が苦しんでいるかを世界に知ってほしい」が彼女の記者としての使命だ。1時間46分。R。 (明)

https://www.aprivatewarfilm.com/trailer/

 

■上映館■ 

AMC Loews Lincoln Square 13 1998 Broadway 

Regal Union Square Stadium 14 850 Broadway 

CMX New York East 62nd Street 400 E.62nd ST.