監督の傑作ホラーのリメイク。「Call Me By Your Name」(君の名前で僕を呼んで、2017年)のルカ・グァダニーノのアルジェントへのオマージュともいえ、ヴェネチア映画祭のコンペにも選ばれた。
ベルリンのダンスカンパニーに入団したアメリカ人ダンサーが 華麗な舞台の裏で渦巻く恐怖の超自然現象を体験する物語。 「ミラノ、愛に生きる」(09年)や「A Bigger Splash」(胸騒ぎのシチリア、15年)などでグァダニーノ監督とコンビを組んだティルダ・スウィントン、「フィフティ・シェイズ」シリーズのダコタ・ジョンソンに加えアルジェント監督のオリジナル作品で主役のスージーを演じたジェシカ・ハーパーが出演する。音楽はオリジナル版はイタリアのプログレッシブ・ロックバンド、ゴブリンが抜擢され話題を呼んだが、本作もイギリス・ロックバンド「レディオヘッド」のトム・ヨークが70年代のベルリンを舞台に美とグロテスクが交差する妖しくも憂いのある世界を音の調べで映し出す。ヨークの書き下ろし25曲が入ったサウンドトラックにも注目だ。 1977年、ベルリン。ドイツ赤軍によるドイツ経営者連盟会長の誘拐やパレスチナ解放人民線と共謀したルフトハンザ機ハイジャック事件など一連のテロ事件が起こった「ドイツの秋」と呼ばれた年だ。 スージー(ジョンソン)は著名なマルコス・ダンス・アカデミーに入るためにオハイオの田舎町からやってきた。居合わせた教師は仕方なくという感じでスージーのオーディションに応じたが、スージーが躍っている最中に舞踏団ディレクターのマダム・ブランク(スウィントン)が現れた。彼女は別の部屋で生徒にレッスンをしていたがスージーの身体から湧き上がる力強いエネルギーに引き寄せられたかのようだった。 スージーは合格しメンバーの一員となったが若いダンサーたちの元気な声と明るい笑顔とは裏腹に舞踏団の奇妙でおぞましい実態がその姿を現していく。ビジュアルも音楽も清麗さと毒々しさが混ざりあうような一種独特の雰囲気を醸し出す。2時間32分。R。 (明)