ジョーカーが描いた夢  Joker: Folie à Deux 

  「ジョーカー」(2019年)の続編。ピエロのバイトで生活するアーサー・フレックが社会の隅に追いやられ、殺人鬼ジョーカーに変貌してから2年。死刑求刑が確実な裁判に臨むアーサーの生活ぶりと彼が思いがけずに出会ったハーレー・クインとの狂気の恋が語られる。 

 ミュージカル仕立ての心理スリラーという変わったジャンルでクインに扮するレディ・ガガとジョーカーのホワキン・フェニックスの歌う場面が随所に挿入され、ややミュージカルの比重が大きい。前作に比べて殺人場面など目に見える残虐さは抑え気味だが悲痛、絶望といった内面の残酷さが増幅され、暗さで押しつぶされそうな雰囲気が漂う。 

 アーサーは逮捕後アーカム州立病院に収容され裁判を待っている。矯正施設のようなもので環境は劣悪かつ看守は暴力的だ。げっそりやせ細り、ピエロ姿で闊歩したあのジョーカーの面影はない。 

 弁護士のスチュワート(キャサリン・キーナー)は殺人を犯したのはアーサーの中にいるもう一人の人物ジョーカーなのだといわゆる多重人格を理由に「精神障害による無罪」を勝ち取る戦略だが、アーサー自身の反応は鈍い。事件をきっかけに社会への不満を募らせる人々の代弁者として祭り上げられたものの、アーサーには将来の希望もなく「生きたい」という情熱が無くなっていたからだ。 

 しかし変化が訪れる。ある日、アーサーは病院内で合唱グループに参加するハーレー・クインに出会い、二人は恋に落ちた。明らかにアーサーの顔には微笑みが戻り、見違えるように覇気が感じられるようになった。ただし、クインのアーサーに対する想いにはどこか屈折した感情が入り混じっていた。 

 クインとの未来を切望するアーサーはスチュワートを解任し、自身が弁護人になることを選ぶ。しかもジョーカー姿で。アーサーはジョーカーの格好をしている時は驚くほど自信に満ち溢れていた。2年前のあの時のように。2時間13分。R。(明) 

(写真)アーサー(フェニックス)はクイン(レディ・ガガ)に恋をした 
Photo : Niko Tavernise/™ & © DC Comics /Warner Bros. Pictures 


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