NY映画祭、劇場で開幕

リンカーンセンターで10月10日まで

 今年59回目を迎えるニューヨーク映画祭が24日から10月10日までリンカーン・センターで開催されている。昨年はオンラインとドライブイン上映のみであったが、今回は劇場上映となる。世界から厳選された32作品が上映される。メイン部門は、ジョエル・コーエン監督、フランシス・マクドーマットとディンゼル・ワシントン主演によるシェイクスピア悲劇の映画化『The Tragedy of Macbeth』で開幕。中間ハイライトはニュージーランド出身のジェイン・キャンピオン監督が1920年代のアメリカ西部を舞台にした心理劇『The Power of the Dog』。クロージングのペドロ・アルモドヴァル監督の『Paralleled Mothers』は、ペネロペ・クルズと新人ミレナ・スミット演ずるマドリットの病院の2人の女性を描く。

 巨匠監督ではアメリカのトッド・ヘインズがニューヨークの伝説的バンドを追うドキュメンタリー『The Velvet Underground』、オランダのポール・バーホーベンがキリストを見たという中世の尼僧を描く『Benedetta』、タイのアピチャートポン・ヴィーラセータクンの『Memoria』は女性研究者(ティルダ・スウィントン)がコロンビアで体験する超自然現象を描く。新人監督ではイランのパナフ・パナヒのロード・ムービー『Hit the Road』など。異色作にはアフガニスタンからロシアを経てデンマークに移住した友人の逃避行人生をアニメで描くヨナス・ポエール・ラスムッセンの『Flee』など。

 人間関係の機微を描くことに巧みな韓国のホン・サンスの『In Front of Your Face』『Introduction』とともに、濱口竜介作品が2本選ばれた。短編オムニバス作品『偶然と想像 (Wheel of Fortune and Fantasy)』、妻を失った男の喪失と希望を描く村上春樹原作の『ドライブ・マイ・カー (Drive My Car)』(写真上:『ドライブ・マイ・カー』Courtesy of Culture Entertainment, Bitters End, Nekojarashi, Quaras, NIPPON SHUPPAN HANBAI, Bungeishunju, E’SPACE VISION, C&I, The Asahi Shimbun Compapy.)である。

 9作の注目作品を集めたスポットライト部門では、細田守監督のアニメ『竜とそばかすの姫(Belle)』、ヴェス・アンダーソン監督の『French Dispatch』、ショーン・ベイカー 監督の『Red Rocket』、女優マギー・ギレンホールの処女監督作『The Lost Daughter』などを紹介。

『竜とそばかすの姫』 Courtesy of Studio CHIZU

 革新的な映画表現の長編15作、短編36作を紹介するカレンツ部門では、東直子の短歌を原作とした杉田協士監督の長編『春原さんのうた』 や西川智也、池添俊、斎藤大地の実験映画短編が紹介される。

 特別上映ではニューヨークで1960年代から外国、インデペンデント、実験映画を自主上映した後にニューヨーク映画祭の初代共同ディレクターを務めたエイモス・ヴォーゲル(1921〜2012)生誕100年を記念する特集が同映画祭を皮切りに、アンソロジー・フィルム・アーカイブ、フィルム・フォーラム、MoMAなど複数の映画上映団体で展開し、ニューヨークの映画文化のパイオニアを讃える。 (平野共余子)

詳細はウェブサイトhttps://www.filmlinc.org/nyff2021/ を参照。