アーモリー・ショウが9日から12日まで、ジャビッツ・センターにて開催された。コロナ禍中でも海外からの参加も多く、37か国から157ギャラリーが参加した。日系では、ホワイトストーン・ギャラリー(香港、東京、台北)、ア・ライトハウス・カナタ(東京)、ウルテリア・ギャラリー(ニューヨーク)がそれぞれ見応えある作品群を披露していた。
ホワイトストーン・ギャラリーは、会長の白石幸生さん(76)を筆頭に、台湾、香港、ソウルからそれぞれスタッフが集結して勢いを示していた。「コロナでも年に1回は自ら海外に出なくては」という。白石さんは昭和42(1967)年の画廊の創業以来、具体美術協会を世界のマーケットに送り価値を高めた第一人者。グッゲンハイム美術館で2013年に開催された「gutai: splendid playgroud (具体:素晴らしい遊び場)」展にも白髪一雄さんや元永定正さんの作品を貸し出すなど貢献した。今回のラインアップは具体美術第2世代の代表作家、前川強さん(1936〜)で、1965年の前衛的な作品から、昨今の麻を使用した大胆で美しい色合いの作品群までを堂々と揃えて貫禄を示していた。また「最近のアジアでは若手の作品がどんどん売れているけれども、またマスターたちの時代がやってくる」と動向を語ってくれた。
ア・ライトハウス・カナタは、今回が初出展だ。「開催時期が今までの春から秋に移ったことでかねてからの希望が実現しました」とオーナーの青山和平さん(42)は、15人の作品を展示。日本人作家ならではの繊細で完成度の高い作品は、人気を集めていた。特に人目を引いていたのは、佐藤健太郎さん(1990〜)の抽象画 Serenity VII (2020, 71.6×107.4 in.)だ。若干30歳の日本画は、伝統的な「たらしこみ」技法を使いつつも透明感あふれる爽やかな青を基調とした画面で、海外では無名にも関わらず初日に売れ、先述の白石さんの言葉を裏付け今後の展開が期待される。あわせてメトロポリタン美術館内の常設で知られる深見陶治の青緑の磁器もさりげなく存在感を示していたが、深見さんの作品は当地のエリック・トムセン・ギャラリーが定番作家として多く扱っているので、ア・ライトハウス・カナタと2か所で展示して人気のほどが伺えた。
先頃からシカゴ拠点のカヴィ・グプタの取扱作家となった、在ニューヨークの松山智一さん(1976〜)の曲線キャンバスの華やかな作品 If I Fell from me to you (2021, 63.7×66 in.)も見られた。イスタンブールから出展のディリマートも円形の抽象作品を出していたのも興味深く、ここ数年の彼の絶え間ない努力が形に現れていると感じた。またショーン・ケリーからは森万里子さん(1967〜)の乳白色に虹色が入った美しい彫刻Sprifer III (2017-2018, 513/16×30 5/16x 20 13/16 in.)も光を放って人々を魅了していた。田邊多佳子さん率いるウルテリア・ギャラリーはアーモリーに2回目の参加で、在ニューヨークのアイルランド人アーティスト、ジョージ・ボルスターさん(1972〜)のタペストリーを揃えてパンチのある展示を見せていた。(佐藤恭子、キュレーター)
(写真左)左ホワイトストーン・ギャラリーの白石幸生さんと前川強さんの作品 Untitled, 2016, Acrylic, stitch on burlap mounted on canvas, 70.8×59.4 in.
(写真右)背景、佐藤健太郎さん(1990ー)の抽象画 Serenity VII (2020, Japanese pigments on Japanese paper on 3 individual panels, 71.6×107.4 in.)ア・ライトハウス・カナタの青山和平さんと筆者