愛国という名の裏切り Official Secrets

 2003年イラク戦争開戦前、英米などで反戦運動が活発化するなか、GCHQ(英政府通信本部)職員キャサリン・ガンがNSA(米国家安全保障局)の通信傍受指示疑惑をリークした事件を描くポリティカル・サスペンス。原作はマーシャ・ミッチェルとトーマス・ミッチェルによるノンフィクション『The Spy Who Tried to Stop a War』。
 主人公キャサリンには「プライドと偏見」(2005年)などのキーラ・ナイトレイ。レイフ・ファインズ、マシュー・グードらが共演。監督は第78回アカデミー賞外国語映画賞受賞作品「Tsotsi」(ツォツィ、05年)をてがけたギャヴィン・フッド。
 開戦前、国連安保理では英米はイラクへの軍事制裁を強く推したがフランス、ロシアなどが反対していたため、英米はチリ、パキスタンなど非常任理事国の賛成票を必要としていた。英米はこれらの国の国連代表部職員らを通信傍受することで開戦を有利に進めようとしたと言われている。  
 キャサリンは海外在住の経験などから語学能力を買われGCHQで傍受の仕事をしていた。2003年2月、イラクへの武力制裁が現実味を帯びる中でキャサリンはある日、NSAからGCHQに送られた手紙を目にする。キャサリンの部署の職員全員に回ってきたメールでキャサリンが偶然見つけたものではない。しかし、その内容は安保理にイラク戦争開戦を承認させるための通信傍受要請だった。
 現時点でイラクが大量破壊兵器を保持している確たる証拠がないままに多数の犠牲者が出るであろう戦争に進むことはばかげている。考えた末に、キャサリンは友人らを通じてNSAの手紙をメディアにリークする。
 キャサリンには職務上の守秘義務がある。しかし自分の使命はイギリス国民の安全であり、政府が国民をだます手助けではない。決意は固かったが手紙の存在がオブザーバー紙によって報道され事態が進むうちにキャサリンは予想だにしない困難に巻き込まれていく。
 社会の利益と自身のキャリア、プライバシーを天秤に賭けなければならない告発者。一歩前に踏み出すのは強い信念だ。1時間52分。R。(明) https://www.ifcfilms.com/films/official-secrets

■上映館■
AMC Empire 25
234 West 42nd St.
AMC Lincoln Square 13
1998 Broadway
City Cinemas 1, 2 & 3
1001 Third Ave.