米国で和牛牧場、映画「東京カウボーイ」NYとLAで劇場公開へ

ジャパン・ソサエティーで先駆け上映会

 日本人ビジネスマンが、経営不振に陥っている米国モンタナ州の牧場を買収し、高級和牛の生産で成功の糸口をつけるまでの物語を描いた新作映画「東京カウボーイ」(マーク・マリオット監督)が8月30日からロサンゼルスとニューヨークで劇場公開される。米国公開に先がけ15日会員限定の上映会がニューヨークのジャパン・ソサエティー(JS)で行われ、監督と助演俳優のゴヤ・ロブレスが舞台挨拶した。

 日本人の主演はビジネスマンのヒデキ役に井浦新(=写真上・Production Company: Salaryman Film llc=)と本作の脚本も担当した女優の藤谷文子に加え、ベテランの國村隼が出演している。

 短期出張の予定で現地入りした主人公のヒデキは、東京でイメージしていた牧場の様子が全然違い、現地の事情に精通している仲介業者の責任者和田(國村隼)が説明会前夜に泥酔事故で緊急入院したこともあり、慣れない英語で一人でプレゼンテーションするはめに。相手にされない姿に見かねた牧場世話役(ゴヤ)の助けで、次第にカウボーイたちと打ち解けていく様子を現地で苦労する日本人ビジネスマンの心情を通して丁寧に描かれている。社内恋愛中の婚約者で会社の上司ケイコ(藤谷)が連絡の途絶えたヒデキの様子を見に現地に飛んでくる。そこで目にした光景は、「少しの期間しかいないのに全く別人みたい」に変身したヒデキの姿だった。

モンタナで和牛牧場めざす日本人ビジネスマン描く

会場からの質問に答える左からロブレス、マリオット監督、司会のフレッド・カタヤマ氏(15日、ジャパン・ソサエティーで、写真・三浦良一)

 山田洋次監督の助監督として映画の製作に携わっていたこともある本作品の監督、マーク・マリオット氏は「アメリカに帰国した際、モンタナの牧場で日本人労働者を受け入れているという記事を目にしたんです。自分自身が魅了された日本での生活経験から、モンタナの牧場で働く日本人たちは果たして今どんな気持ちなのだろうという考えからこの『東京カウボーイ』の物語が生まれました」。15日ジャパン・ソサエティー(JS)で開かれた会員限定の上映会舞台挨拶でそう映画制作の動機を語った。

 構想から4年の年月を経ての作品完成となった。脚本はデイヴ・ボイルと本作に出演している俳優の藤谷文子、撮影はオスカー・イグナシオ・ヒメネス、編集はヤス・イノウエが担当した。

 同映画は、ビジネスマンのヒデキ(井浦新)が、上司(藤谷文子)を説得して日本からモンタナに渡り、落ち目の牧場を高級和牛の生産で成功させるまでを描いている。牧場で働くハビエル(ゴヤ・ロブレス)やオーナーのペグ(ロビン・ワイガート)と出会い、彼はすぐに自分の計画が思っていたほど単純ではないことを知る。事態が進展するにつれ、文化が衝突し、ヒデキはやがて2つの世界の狭間にいることに気づく。現地モンタナで2週間の滞在ロケで撮影したという。景色も雄大で美しく、ストーリー展開も面白く、ラブストーリーとしても成立しており感動的なインデペンデント映画だ。舞台挨拶した俳優のゴヤ・ロブレスはプエルトリコとエクアドルの血を引くラテン系俳優で傷つきやすく不安定な役から、風変わりで不器用な役まで、彼の正直さと予測不可能な魅力をスクリーンに醸し出している。「カウボーイ役は初めて。これまで悪役が多かったのでこういう人間味溢れた役柄はとても面白く、オーディションから楽しく参加させてもらった」と語った。

ヒデキは婚約者の上司ケイコを説得して渡米するが・・・

 同作品はサラリーマン・フィルムによって製作。配給会社パーディーが8月30日から9月6日まで米国で劇場公開する。ニューヨークとロサンゼルスでの上映日程は次の通り。

▽ニューヨーク=8月30日(金)と31日(土)午後7時、AMCエンパイア25劇場(タイムズスクエア)ではプロデューサーのブリガム・テイラー氏、俳優のロビン・ワイガートとゴヤ・ロブレスが舞台挨拶とQ&Aに応じる。

▽ロサンゼルス=8月30日(金)と31日(土)午後7時、AMCバーバンク16ではマーク・マリオット監督、藤谷文子、スカウト・スミスが舞台挨拶しQ&Aに応じる。

 「マーク・マリオット君のこと」山田洋次

 本作「東京カウボーイ」を監督したマーク・マリオット氏は、日本で山田洋次監督の下で映画制作に携わっていた。山田監督が、同映画の完成にお祝いの言葉を寄せている。

     ◇ 

 「寅さん映画の助監督だった頃のマークのことはよく憶えている。明るくて、ジョークがうまくて、スタッフに愛される気持の良い青年だった。そのマークの監督した映画を見て、ぼくはまざまざと若き日の彼を想い出した。作品は作者の人となりを反映するものだが、『トーキョウ・カウボーイ』を見ながら、ぼくはマークと語り合っているような暖い気分に包まれたものだった。マーク君、おめでとう」。   山田洋次