夏の暑苦しさを吹き飛ばすにはうってつけの一作。女性FBI捜査官が連続殺人犯を追うというオカルト・サスペンスで「羊たちの沈黙」を思い起こさせるが、犯人の狂気というより超自然的要素が濃い作品だ。
監督・脚本は「The Blackcoat’s Daughter」(フェブラリー 悪霊館)のオズグッド・パーキンス。悪魔、魔術といった題材が絡む作品で独特のセンスを発揮する。主人公のFBI捜査官リー・ハーカーには「Watcher」(ウォッチャー)などでスクリーム・クイーンの異名を持つマイカ・モンローがここでは得意の悲鳴を押し殺し迫真の演技を見せる。
1990年代のオレゴン州。20年以上に渡りFBIの未解決トップ・リストにあるのが連続殺人犯ロングレッグス。新人捜査官のハーカーは上司のカーター(ブレア・アンダーウッド)からこの捜査を命じられる。
すでに10組以上の家族がロングレッグスの犠牲となり惨殺されていた。とはいってもロングレッグス本人が直接手を下した形跡はない。いずれも父親が家族を殺してから自殺する無理心中のパターンでいわゆる間接殺人だ。現場には必ず暗号のような文字とロングレッグスという名のメモが残されているのだ。
ハーカーはロングレッグスのメッセージやあらゆる状況証拠を検証し、一つの仮定にたどり着く。どのケースも家族には9歳になる娘がいていずれかの月の14日に生まれていること。事件は誕生日の前後6日間の間に起こっていることなどだ。
謎解きを進めるにつれてハーカーは子どもの時の遠い記憶の中に不思議な人物との出会いの一瞬を垣間見る。はっきりとはしないが妙に気味の悪い光景だったような気がする。その記憶は時間と共にハーカーの頭の中で増幅し始める。悪魔が人間に仕掛けた堕落の道が徐々に解き明かされる。
ロングレッグスに扮するのがニコラス・ケイジ。役柄によっては特異な演技を見せることがあるが本作ではそのど派手ぶりが常軌を逸している。1時間41分。R。 (明)
(写真)声も出ずに立ちすくむハーカー(モンロー) Photo:Neon
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