「社会的弱者をテーマにしたい」

NYアジアン映画祭参加作品
戸田監督に聞く

ICHIKO 無国籍者の不安描く

 ニューヨーク・アジアン映画祭で米国プレミアム上映された映画「ICHIKO」は、1990年代まで日本で表面化することの少なかった無国籍者の存在に光を当てた作品だ。離婚をして300日以内に生まれた子供は前夫との間にできた子供とされ、DVなどを恐れて前夫に連絡をしないと無国籍状態になってしまうという社会の歪みの中で不安を抱える若者像に焦点を当てた。

 作品は、第47回日本アカデミー賞優秀主演女優賞、第78回毎日映画コンクール女優主演賞など、多数の国内賞レースで受賞した。映画祭では、釜山国際映画祭、東京国際映画祭、ヨーテボリ国際映画祭、ウディネ・ファーイースト映画祭など多数の国際映画祭で上映された後、念願の今回のニューヨークとなった。作品の日本国内興行は1億を超え話題となった。

 戸田彬弘(あきひろ)監督(40)は近畿大学文芸学部芸術学科舞台芸術専攻卒業。株式会社チーズfilm代表取締役。劇団チーズtheater主宰。近畿大学で大橋也寸からルコックシステムを学び、演劇から活動をスタートさせた。独学で映画を撮り数々の賞を受賞するなどこれからの日本の映画界を背負える逸材でもある。「社会的弱者、生きづらさを感じている人をフィーチャーしていきたいですね。社会制度や教育制度がすべて完璧ではない中で、市子のような、無国籍というああいう境遇の彼女のことをどう感じるのか、守りたいのか、映画を見た個人が持ち帰ってもらえ、考えてそして行動するきっかけになればいいですね。映画には社会の良くない部分を変えていくパワーがあると信じます」と語った。(三浦良一記者、写真も)