声を潜め音を殺して生き延びる「クワイエット・プレイス」シリーズの第3弾。続編ではあるが物語は前2作を遡る前日譚の位置づけだ。
地球を侵略した残虐なエイリアン・モンスターは視覚機能がなく盲目だが、その分、鋭敏な聴覚を持っている。少しでも音を立てた瞬間にモンスターは襲ってくる。前2作では地球が急速に破滅に向かって行く中でのアボット・ファミリーのサバイバルがメインテーマだった。舞台は人類がほとんど滅びた田舎で静寂が全編を覆っていた。
何故そんな世界になってしまったのか。それを物語る3作目は世界で最も賑やかで騒がしいビッグアップルでスタートする。
監督、脚本、登場人物は一新。「12 Years a Slave」(それでも夜は明ける)でアカデミー助演女優賞を受賞したケニア出身女優ルピタ・ニョンゴとネットフリックスの人気ドラマ「Stranger Things」で大ブレイクのジョセフ・クインの顔合わせ。監督・脚本は「Pig」で注目を浴びた新鋭マイケル・サルノスキ。
詩人のサムは、がんのためニューヨーク市郊外のホスピスに入院している。今日はコーディネーターのすすめで気晴らしにマンハッタンに行ってみることにした。ペットのフロドも一緒だ。昔、大好きだった自宅近所のピザを食べるのも悪くない。
しかしマンハッタンに着いてしばらくすると突然、上空が騒がしくなり、巨大なモンスターが人々を襲い始める。彼らが音をめがけて襲ってくるというのが分かるまでそれほど時間はかからなかった。沈黙の世界の扉が開き始める時だ。
政府はマンハッタンからの避難を呼びかけ、サムは移動の途中に知り合ったエリックと行動を共にする。自分の命はモンスターが現れる前から限られていた。襲われる怖さから逃げようとする行為は本能的なものだが死ぬこと自体はすでに受け入れている。不思議な心理的空間の中でサムはエリックの手助けで自分がしたかったことを遂行する。サムが「生きている」と実感した唯一の時だった。ペットのフロドの「全てはお見通し」的振る舞いには脱帽。1時間39分。(明)
(写真)声を出しそうになるサム(ニョンゴ、左)Photo : Gareth Gatrell/Paramount Pictures
■上映館■
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