虹のかけら熱演

戸田恵子が一人芝居

カーネギーホールで

写真・佐々木悠人

 女優・戸田恵子が6月25日と27日夜、カーネギーホールのワイル・リサイタルホールで一人芝居「虹のかけら」(フジサンケイ・コミュニケーションズ、FCI主催)を上演した。映画「オズの魔法使い」で全世界のアイドルとなった天性のミュージカルスター、ジュディ・ガーランドの人生を、代役兼付き人として支えた同名のジュディ・シルバーマンという1人の女性の視点から描いたオリジナルストーリーだ。脚本は演出家の三谷幸喜氏。戸田の還暦の記念に三谷氏が書き下ろしたもので、初演は2018年5月。パンデミックを挟んで5年ぶりの上演となった。

 プロットや歌う曲目などは日本とほぼ同じだが、カーネギーホールは音楽ホールのため、フットライトやスポット照明、字幕などはなく、舞台セットも基本ない状態での演技。戸田にとっても新鮮な一人芝居で「こんな明るい舞台でやったことがない」と驚いていたほど。音楽はピアノ・荻野清子、ドラム・BUN Imai、ベース・鈴木陽子。客席は両日共に満席で戸田のオーバー・ザ・レインボー(虹の彼方に)の歌声がカーネギーホールに美しく響いた。

 2日目。最終日の舞台に現れた戸田は、満面の笑みを称えてステージの中央で両手を広げ「2日目の今日がベストです。最高の演技ができると思います」と観客の心を見事に掴んだ。

 トニー賞、グラミー賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされたジュディ・ガーランドは、しかし自身でオスカーを手にすることはなかった。3度の結婚に失敗し、薬物中毒となるなど晩年は孤独だった波乱の人生を、横から友として、付き人として支え、そして時として嫉妬して生きた主人公を歌と芝居で演じ、観客を釘付けにした。カーネギーホールには、母ジュディが取ることのできなかったオスカーを手にした娘のライザ・ミネリの写真が飾られている。大劇場には芸術を守るミューズ(女神)も魔物も住んでいると言われる。その両方に見守られて、戸田はカーネギーホールの天井から降り注ぐ虹のかけらを一身に浴びた。      (三浦)