鈴木亮平さん受賞の喜び語る

「アジア映画の存在感増大の一つになれば」

第22回ニューヨーク・アジア映画祭

ライジングスター・アジア賞「エゴイスト」主演で

 第22回「ニューヨーク・アジアン映画祭(NYAFF)」が14日から30日まで、フィルム・アット・リンカーンセンターとNJ州にあるバリモア・フィルムセンターで開催されている。15日夜、リンカーンセンターで松永大司監督『エゴイスト』が上映され、上映後の質疑応答に松永監督と、ともに来米した主演の鈴木亮平さんが大きな歓声のなか登壇した。

 映画『エゴイスト』は日本で今年2月に公開。ひと組のゲイカップルとその周辺の人間模様を描き、愛とは何かということを真正面から問いかけた、大きな話題となった作品。2020年に50歳の若さで亡くなったエッセイスト、高山真の自伝的小説『エゴイスト』を映画化したものである。

 また今回、鈴木亮平さんは同映画祭による「ライジングスター・アジア賞」を受賞。多くの人が観にきてくれたことや受賞について、また原作の高山氏や監督に対して感謝の言葉を述べた。受賞について「アジア映画の存在というものが近年本当に増してきている中で、今回の受賞で、自分がそのパワーの一つになれているのであればとても嬉しく思う。アメリカ映画の中でアジア・コミュニティーからも映画が生まれ、ハリウッドでも活躍するアジア人俳優がいるが、自分もそんなチャンスがあればいつでもという思いは昔からあります」と語っていた。上映後の質疑応答では、鈴木亮平さんは通訳をつけずすべての質問に英語で受け答えした。

松永監督「原作を読み、ゲイの人たちの物語であるとともに、大きな愛の物語であると思った」

ーなぜこの映画を作ろうと思ったのか?

 松永監督「原作を読み、ゲイの人たちの物語であるとともに、大きな愛の物語であると思った。この物語を自分を含めて異性愛者が中心のチームでどのように形にするのかを考えた時にそこにはやはり対象に対して誠実に向き合いたいという気持ちがあったので、ゲイ当事者の方たちにたくさん入ってもらって丁寧に作った」

 鈴木「オファーをもらった時、異性愛者の自分がこの役を演じるべきかどうか迷った。しかし調べてみると当時日本でゲイだと公表して活動している俳優はまだ一人も見つけられなかった。日本では俳優がゲイであることを公表することに大きなリスクが伴う。まずは社会や我々映画業界が前に進んでいくために、この映画を作ることが何より大切なのだと思った。少なくとも現時点においてはLGBTQ+を取り巻く社会の状況や日本映画を前に進める上で、大きな一歩になったのではと誇りに思っています」

ーこの秋、北米で『エゴイスト』の公開が決まったそうですね。

 松永監督「映画はお客さんに届いて初めて完成すると思っている。アメリカの映画を観て僕は映画を作りたいという気持ちが生まれた。北米で僕の大切な映画が公開されることは本当に本当に幸せです」

 鈴木「この映画を観て感じた良いことも悪いことも、友達に話したりSNSで感想を書いたりしてもらえたら嬉しい。それは僕らにとって新たな力となり、今後のより良い作品につながるから」

■映画を観たニューヨーカーのコメント

ラッセルさん「とても良かった。主人公とその恋人の母との関係の描き方が美しく、人間同士の繋がりに感動した。僕はシンガポール出身でゲイだけど、ゲイを公表しづらい日本の状況は同じアジアだからよくわかるよ」

チョルソさん「ストーリーを知らずに観たが、監督のカメラワークがとても良かった。BGMがほとんどなく、カメラが接写したり離れたりすることでその場の彼らの気持ちをよく表していたと思う」

ジェンティさん「とてもエモーショナルな映画だった。特に主人公の優しさに心を打たれた。僕もゲイだけど同じような状況になったら僕も主人公と同じように恋人の母を気にかけ、彼がやったように身の回りの世話をしたりするかもしれない」